高所得ゆえに給付が受けられない「子育て罰」

都民ファーストの都議会議員には、昨年の参議院選挙前から、子育て支援拡充を目指す会とともに、児童手当や高校無償化などの所得制限撤廃を実現してほしいと要望し、面会をしてきた。

拙著『子育て罰』(桜井啓太氏との共著・光文社新書)での批判についても、都民ファーストの都議会議員は、熟知しており、そのことは小池都知事にも伝えられた可能性は高い。

小池都知事の「所得制限が子育てに対しての罰」という子育て罰発言は偶然ではないのではないか。

「所得制限があることによって、夫婦で一生懸命働いて納税をしているがゆえに、逆に、そういった給付が受けられないというのは、ある意味で子育てに対しての罰、罰ゲームのようになってしまう」(2023年1月5日、テレビ朝日のインタビューで小池都知事)

研究者である私が訴えただけでは、小池都知事は東京都における所得制限のないチルドレンファースト給付を決断しなかったかもしれない。

「ふつうのママやパパ」たちが、所得制限という子育て罰をなくしてほしいと訴えたからこそ、このタイミングでの決断となったのだと、推測している。

このことは、少なくとも地方政治レベルにおいて、「ふつうのママやパパ」のロビイングに政治の反応性(レスポンシビリティ)が高まっている証拠でもあると言える。

東京都庁第一庁舎、2023年2月

「子育て罰」をなくすレジームチェンジは地方から

小池都知事の決断を読み解くもう1つの視点は、明石市と、維新(大阪維新の会・日本維新の会)の動きである。

すでに広く知られているが、明石市の泉房穂市長が実現してきた子育て支援の「5つの無料化」は、「所得制限なしがあたり前」である。所得制限ありき(しかもより厳しい所得制限を導入しようとしていた)自民党政治への、地方政治からの対抗軸を形成してきた。(「18歳まで所得制限なしで医療費無料」「中学校の給食無償」「第2子以降の保育料完全無料」「公共施設の入場料無料」「0歳児の見守り訪問・おむつ定期便」。)

また、2022年の参議院選挙の当時から、「教育の完全無償化」を掲げてきた維新(大阪維新の会・日本維新の会)も大阪府民である子どもたちへの、塾代助成、小中学校の給食の完全無償化、高校無償化での所得制限撤廃に加え、第1子からの保育料無償化、幼児教育無償化、大阪公立大学・大学院の無償化なども追加するという大胆な政策を1月20日に打ち出してきた。

統一地方選挙をひかえ、小池都知事、都民ファーストの所得制限のないチルドレンファースト給付に、吉村府知事率いる維新が対抗する意図は明確である。