移動機会の増大は、旧正月の7連休のみに留まらない。これと前後する約40日間、今年は1月7日から2月15日ごろまでが、旅行数が急増する「春運」の期間となる。ブルームバーグはこの期間、昨年の2倍の規模となる約21億回の旅行が生じるとの予測を取り上げている。

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長く続いたゼロコロナ政策は、今年の旧正月に反動を生みそうだ。外交問題評議会のヤンゾン・ファン氏は、ワシントン・ポスト紙に対し、コロナ禍で蓄積した旅行欲を満たす「報復ツーリズム」が流行するとの見方を示している。この「報復ツーリズム」により、「1月末までにウイルスが(中国の)国土の隅々まで行き渡ることは間違いない」とも氏は指摘する。

中国政府は1カ月で6万人が死亡したと認めた

国外旅行にも復調の兆しがある。中国政府は旧正月に先立ち、1月8日から渡航制限を解除している。CNNは旅行予約サイト「Trip.com」のデータを基に、旅行解禁が予告された翌日、フライトの予約数が254%上昇したと報じている。

記事によると日本もまた、中国の人々のあいだで人気の旅行先のひとつになっているという。コロナ前の2019年のデータでは、日本はタイに次ぐ2位の人気で、950万人の中国客が訪れた。

このような大移動は、通常ならばパンデミックからの回復として歓迎すべきものではある。だが、中国国内の感染状況を鑑みれば、現時点での旅行再開を適切な動きと捉えることは困難だ。

CNNは1月15日、中国当局がついに約6万人の死亡例を認めたと報じた。対象期間は12月8日から1月12日となっており、規制緩和直後からのおよそ1カ月間だ。当局はパンデミック入りからこれまで、公式には5273人の死亡しか認めてこなかった。一気にこの10倍以上の死者数を認めた形だ。

死者が100万人に達する推計も

しかし海外の専門機関は、これでもまだ非現実的に低い数字であり、今後も数字は拡大するだろうと述べている。ブルームバーグは英保健分析会社のエアフィニティーによる分析として、死者数が旧正月中の1月下旬にピークを迎え、最悪期には1日あたり3万6000人が死亡するとの試算を報じた。

米FOXニュースによると、ワシントン大学医学部保健指標評価研究所は、今年の中国におけるコロナ死が計100万人に達するおそれが高いと報告している。

ゼロコロナ緩和の直後から、中国の感染率は異様な上昇を見せてきた。CNNによると中国疾病予防管理センターの主任疫学者は、人口の8割がすでに感染したと発表している。すでに多くが感染しているため、今後は大規模に拡大しないとの主張だ。