だが、感染により免疫を獲得しても、その効力は時間とともに低下する。オミクロン株に関する知見は限定的であるものの、デンマークの研究チームによる査読前の論文によると、約1カ月後にはオミクロン株の同系統の亜種に再感染したという例が複数報告されている。

12月8日のゼロコロナ緩和を受け、中国の都市部では12月中旬から下旬に感染が爆発した。1月下旬の旧正月はちょうど、再感染が起き始める時期と重なる。

再感染では一般に重症化のリスクが低いと言われているものの、すでに逼迫ひっぱくしている中国国内の医療システムにさらなる負荷を与えることは必至だ。

中国人の大移動が農村部を直撃する

中国では過去に国内産ワクチンをめぐるスキャンダルが発生しており、農村部ではいまだブースター接種をためらう高齢者も多い。都市部から帰省した出稼ぎ労働者たちが、医療制度の整わない農村にウイルスを持ち込み、一気に打撃を与える事態が懸念される。

中国の農村風景
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米シンクタンクの外交問題評議会で国際保健問題担当上級フェローを務めるヤンゾン・ファン氏は、CNNに対し、高齢者がワクチンを接種しているケースでも、最後の接種から6カ月以上が経過し、抗体レベルはすでに非常に低くなっていると指摘する。

旧正月の農村部への大移動は、このような状況で始まった。英エコノミスト紙は1月20日、「出稼ぎ労働者たちは(旧正月から始まる)うさぎ年を前にして、脱兎だっとのごとく故郷へ向かっている」と述べ、都会から農村部への大移動を報じている。

米ABCはこうした無謀な大移動が、結果として中国経済への打撃となるのではないかと論じている。

アクサ・インベストメント・マネジャーズの上級エコノミストであるアイダン・ヤオ氏は記事に対し、都市部では今後ゆるやかな回復が見込まれる一方、「出稼ぎ労働者たちが病人の看護のため、旧正月明けに都市部に戻れないケース」が想定され、このような事態が多発すれば同国の経済にとって新たな試練となるのではないかと指摘している。

中国人観光客に頼る各国も手放しでは喜べない

中国国内に限らず、世界経済への影響も無視できない。中国旅行客の再開は各国の経済に吉報となるはずだったが、感染率が高止まりしている現状、各国としても受け入れを手放しでは喜べない状態となった。

パンデミック以前、中国国民の旅行需要は、世界経済を一定程度下支えしてきた。ロイターはパンデミック以前、中国からの旅行客が世界で年間2550億ドルを費やしていたと指摘する。

アジアにおいてはさらに観光への影響度が大きい。CNNは、2018年のアジアの観光GDPにおいて、中国が単独で51%を占めていたと振り返る。