気が乗らないからと誘いを断ってオッケー

「明日、こういうメンツで飲みに行くんだけど、いっしょにどう?」
「来週の日曜日、河原でバーベキューするんだけど来ない?」

そんなふうに誘われたけど、なんとなく「気が乗らない」ときはあります。

誘ってくれた相手や来るメンバーが嫌いなわけじゃないし、予定が入っているわけでもない。なぜ気が乗らないのか、自分でもよくわからない。具体的に断る理由が見つからないと、つい「いいね、行くよ」と言ってしまいがちです。

しかし、なんとなく「気が乗らない」というのは、けっこう重要な判断材料。誰しも思い当たるフシがあるでしょうが、最初にそう感じた場合、やっぱり行ってよかった、けっこう楽しかったと感じることはめったにありません。

ことさら楽しそうに振る舞って疲れたり、誰が悪いわけでも具体的にイヤなことがあったわけでもないけど、どよーんとした思いを抱えて帰ることになったりするのが常。たいていの場合、当日を迎える前から、「あーあ、行くなんて言わなきゃよかった」と憂鬱ゆううつな気持ちになります。

いつのころからでしょうか、私たちは「誘われたらとりあえず断らないのが、人として望ましい姿勢」と思い込むようになりました。若いうちは、そうすることで世界が広がったり、可能性をつかむことにつながったりすることもあるでしょう。若者にとってフットワークの軽さは、たしかに大きな武器になります。

石原壮一郎『無理をしない快感』(KADOKAWA)

ただ、人生も後半戦の年代になったら、その姿勢を貫く必要はありません。気が乗らない誘いに無理して付き合っても、特にメリットなんてないどころか、気持ち的にも物理的にもデメリットのほうがはるかに大きいでしょう。

「気が乗らない」と感じるのは、これまでの人生経験で培われたセンサーが拒否反応を示して、「行かなくていい」と教えてくれているのかもしれません。いや、きっとそうです。自分を信じて断る決断をしましょう。

言わずもがなですが、「気が乗らないから」と本当の理由を言う必要はありません。人間関係がギクシャクして、別のストレスを抱えることになります。別の予定をでっちあげるなどしつつ、いちおう残念そうな素振りを示しておきましょう。それが誘ってくれた相手に対する礼儀だし、うしろめたさを払しょくする生活の知恵です。

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