何かを守ろうとする善意も悪意や敵意と同様に危険だ
地味な人文書を一冊出しただけだった私の名前が突然インターネットなどで散見されるようになった時期があった。きっかけは週刊誌に載った「日経新聞記者はAV女優だった!」という趣旨の記事で、いくつかの夕刊紙が追いかけ記事を書いたり、夕方のワイドショーで読み上げられたりしたこともあって、少なくとも当事者の私はひと月ほど落ち着かない日々を過ごした。
とはいえ、追いかけ記事はともかく第一報である「週刊文春」の記事には私がざっと確認する限り大きく事実誤認と思われるような箇所はなく、基本的に私や親の経歴が淡々と書かれ、それについて特に批判的なスタンスというわけでもなかったので、怒ったり反論したりする余地があるかというと微妙で、基本的に黙って世間が話題に飽きるのを待つことにしていた。
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