生活がしんどいのは高齢者も同じだった

子どもへ予算を回す。直接説明して、その理解を得よう。私は「市にはお金がないんです。もうこれからは贅沢を言わないでください」「子どもを支援することが、みなさんのためにもなるんです」と丁寧にお願いし、重ねて呼びかけました。

「おじいちゃん、おばあちゃん、フルコースディナーの後にフルーツとデザート、両方食べていませんか。どちらか片方にして、その分、お腹をすかしたお孫さんに、おにぎりを食べさせてあげませんか」。

でも、どこでも厳しい声ばかり。どの会場でも理解は得られません。

実感させられたのは、そもそも高齢者も大変しんどいという現実です。

「医療費はどんどん上がる」「介護保険料も払わなあかん」「年金だけではギリギリや」「働かんと暮らしていかれへん」。

悠々自適の暮らしをされている方など、ほんのひと握り。財布にも心にも余裕がなく、先の見通せない日々です。

高齢者も子どもも弱い立場に置かれている。ある支援を削って別の支援に回しても、結局どちらかが救われず、軋轢しか生みません。

かといって、新たな負担を市民にお願いする選択肢はない。そうなれば、今ある予算全体を根本から見直すしかありません。

「予算を高齢者から子どもへ回す」という発想は間違い

行政の予算は、縦割りにされ、固定化しています。その枠内だけで無理矢理やりくりせず、市にお金がないという発想から脱却し、予算が張りついている事業そのもののあり方から見つめ直す。既得権にとらわれず、抜本的な予算のシフトを断行し、他の分野から新たな予算を得るべきではと、気づかされたのです。

高齢者から削らずにお金をつくり、新たな子ども施策を実施していきました。子どもへの支援は子育て層だけでなく、まち全体へとプラスの効果が及びます。地域経済が回り出し、税収増にもつながる。結果、高齢者施策の充実にもつながります。

明石では認知症についての施策はもちろん、元気な高齢者への活動支援も拡充しました。各地で見直しが相次ぐバス優待乗車も、高齢化時代を見据えて、新たにコミュニティバスの無料化を開始しました。

写真=iStock.com/SetsukoN
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いまだに高齢者から子どもへ回すという発想が全国的に見受けられますが、そんな勘違いを続けていたら何もできません。子どもも、高齢者も、誰も救われないままになってしまいます。状況を変えるには、ここでも発想の転換が必要です。