早期発見の方法が確立されていない
まだ分からないことだらけの領域であり、若者の命を奪う病気として強く懸念されているものの、その予防法や早期発見の方法は残念ながら確立されていません。
大腸がんは、症状が生じてから検査をしたのでは「時すでに遅し」であることも多いのですが、より早期に発見し、治療をすれば根治が望める病気であります。症状に依存しない早期発見法を確立する必要のある病気と言い換えることもできます。
一般に50歳以上の方には、大腸がん検診がそういった意味でとても大切と考えられていますが、若者にただ検診を拡充するのでは、デメリットの方がメリットを上回る可能性もあり、施策には工夫が求められます。
これからさらなる研究が必要とされる領域であり、なんでもかんでも「若いうちからがん検診」ではないので要注意ですが、今後がん検診のあり方は変わっていくかもしれません。
(注1)Islami F, Ward EM, Sung H, et al. Annual Report to the Nation on the Status of Cancer, Part 1: National Cancer Statistics. J Natl Cancer Inst 2021; 113: 1648–69.
(注2)Bailey CE, Hu CY, You YN, et al. Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975- 2010. JAMA Surg 2015; 150: 17–22.
(注3)Patel SG, Karlitz JJ, Yen T, Lieu CH, Boland CR. The rising tide of early-onset colorectal cancer: a comprehensive review of epidemiology, clinical features, biology, risk factors, prevention, and early detection. Lancet Gastroenterol Hepatol 2022; 7: 262–74.
体にいい肉、悪い肉
どんな食品についてもいえることですが、「特定の食品が体に良いか?」を示すのは簡単なことではなく、「肉が体に良いか?」を証明することも、実は比較的難しいことです。
また、一概に「体に良い」といっても、「体のどこに良いのか?」という点も考えなくてはいけません。筋肉には良いけど、肝臓には悪い。脳には良いけど、腎臓には悪い。そんなこともありえてしまうからです。
一般に、健康なタンパク源とは、魚介類、鶏肉(白い肉)、豆類、ナッツ、種などといわれます。一方で、牛肉や豚肉などの「赤い肉」やソーセージやハムといった「加工肉」は、どちらかといえば健康にはあまり良くないタンパク源と分類されることが多いと思います。
その所以はどこからくるのでしょうか。
実は、赤い肉の研究や加工肉の研究というのは、すでに数多く行われています。
例えば、2011年に報告されたメタ分析を用いた研究があります(注4)。メタ分析は、これまでに報告された複数の研究のデータを統合して解析するという研究手法になりますが、これを用いることにより、より多くのデータから厚みのある評価を行うことができるようになります。
この研究では、20を超える研究の結果が統合され、データを見てみると、赤い肉でも、加工肉でも、その摂取が大腸がんの発症と関連していたということが分かりました。
図表1のグラフを見てみると、肉の摂取量と大腸がんのリスクが見事に相関していることが見てとれます。また、1日あたり140gというところまでは、食べる量の増加と、がんのリスク増加が正の相関をしていることが分かります。