もしマスク氏がユーザー投票に常に忠実であるならば、それもまたひとつのネット上の「民主主義」と肯定することもできよう。しかし、自身の問題は例外だ。
マスク氏はCEOとしての自身の進退について、ユーザー投票を実施した。「Twitterトップを退任すべきだろうか?」と問い、「私はこの投票の結果を遵守する」と誓った。結果は57.5%対42.5%で、退任すべきと考えるユーザーが過半数を占めた。ロイターなどが報じている。
マスク氏はすぐに辞任せず、適切な後任が見つかれば座を明け渡すと述べお茶を濁している。あまつさえ、認証ユーザーのみに投票権を与える必要があると主張し、投票のやり直しをほのめかす始末だ。
プライベートジェット問題にせよCEOの進退にせよ、自身の問題となるとTwitterのポリシーを容易に翻すご都合主義が目立つ。
従業員、ユーザーはマスク氏に振り回されている
マスク氏がTwitterの舞台上で繰り広げるユーザー投票は、一見民主的のようでいて実態はそうではない。氏に不利な結果が出れば、民意はいとも簡単に覆される。
奇策とも言える数々の「改革」と同様、実際は世間の耳目を集めるための手段でしかないのだろう。「劇場型経営」とでも言うべきか、スペースXやテスラの経営を通じて時の人となってきたマスク氏は、世の中の関心を集める方法を熟知している。
その一方、社内では多くのユーザーが知らないところで、従業員たちがトイレットペーパーもないオフィスで働かされるという憂き目に遭っている。
アメリカのIT業界では、いまもリモートワークが広く行われている。その潮流に反して出社を強制しておきながら、いざ従業員がオフィスに向かってみれば、そこにはトイレットペーパーもIT担当もいないお粗末な労働環境が待ち受ける。
マスク氏の着任以降、信頼性を失ったTwitterからは、広告主らも引き揚げ始めた。ユーザーとしては、かつて皆に愛された「公共の広場」の存続を願うばかりだ。
しかし、その未来は決して平穏ではなさそうだ。