記事によると、原因とみられるのが、マスク氏によるコストカットだ。障害の数日前、マスク氏は3つしかない主要データセンターのうち1つを閉鎖している。Twitter社の複数の技術者は、マスク氏のコストダウンがなければこの障害は回避あるいは軽減できていたはずだと指摘する。

ニューヨーク・タイムズ紙は当該のデータセンターが、「SMF1」と呼ばれるカリフォルニア州サクラメントの拠点であったと報じている。クリスマスイブの早朝、同拠点のサーバー群がTwitterのネットワークから切り離され、データセンターとしての機能を失った。

同社のインフラに詳しい3人の技術者らは同紙に対し、サクラメントの施設がまだ生きていたならばバックアップとして機能し、問題は緩和されていたはずだと説明している。

技術者らはまた、マスク氏の行動は「無謀」であり、今後もピーク時には処理能力を30%オーバーするおそれがあると指摘している。

マンハッタンにあるTwitterのオフィスの外壁のロゴ(写真=MainlyTwelve/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
マンハッタンにあるTwitterのオフィスの外壁のロゴ(写真=MainlyTwelve/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

Twitter買収を「エンタメ化」するイーロン・マスク

このようにTwitterの舞台裏では、大混乱が起きている。では表舞台は順調かというと、こちらも混沌の世界だ。マスク氏は珍奇な行動を繰り出し、悪い意味で世間の注目を浴びている。

昨年末には、自由な発言ができるプラットフォームの名声を、CEO自らが毀損きそんする結果を招いた。

マスク氏は昨年12月14日、自身のプライベートジェットの位置追跡問題に言及したジャーナリストらのアカウントを凍結した。米有力テックサイトのアーズ・テクニカなどが報じている。批判を受け、その後凍結を解除している。

米著名テックメディアのワイアードによると、マスク氏は買収宣言に先駆けて昨年3月、「Twitterが事実上の公共の広場として機能していることを考えると、言論の自由の原則を守らないことは民主主義を根本的に損なう。どうすべきだろうか?」とツイートしている。

この時点でマスク氏は、Twitterが担う「公共の広場」としての役割を認識していたことになる。だが、自らのプライバシー問題となるとアカウント閉鎖によって相手の発言を封じており、自身の信念と矛盾する行動を取っていることは明らかだ。

「公共の広場」を作る気はあるのか

矛盾はまだある。好意的な報道を行わないジャーナリストに対しては厳しく対処する一方、これまで凍結措置を受けていた極右アカウントなどに関しては凍結解除を進めている。

凍結されていたアメリカのトランプ前大統領のアカウントに関しては、解除の是非を問うユーザー投票をTwitter上で実施した。結果に沿う形で、その後マスク氏は実際に凍結を解除している。