日本で静かに進む都会と地方の“分断”

現代的な価値観や能力を備えた女性が地方を見限って東京へ流出し、流出の結果の搾りかすのようにして、古くてそれ以外の生き方に排他的な家族観や強固なジェンダーギャップが地方に取り残される。地方ではそのように閉じた構造の中で「少子化で子どもが生まれないのはどうしたらいいか」と、既に出産傾向の高い属性層を相手に、子育て支援策へ財源が振り向けられる。現代の日本では、そういう持続的とは言いがたい形での人口再生産がメインなのだ。

少子化は、いわゆる先進国病の一つであることには間違いはない。だがこの、東京と地方のそれぞれに様相の異なる少子化構造から感じ取れるのは、人種や階級や経済的地位など、居場所による価値観の対立がこじれて政治や社会に分断を起こした米国や欧州と同様の分断が、一見平穏そうな日本にも都会対地方という形で確実に起こりつつあるということである。

米国では、分断とはこれまでの常識のように政治的思想の左右(保守と革新)なのではなく上下(グローバルセンスのある視野の広い知識階級と、ローカル発想から逃れられない視野の狭い非知識階級)なのだ、という見方がある。それでなくとも統計史上最低の出生数を打った2022年、シュリンクし小さくなる一方の日本社会で「分断」とは、お互い「見たいものしか見ていない」では済まない結末を生みそうだ。

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