特に仕事を持つ女性の帰省ブルーは、女性の扱いが低く保守的な風土の地方においては男性の比にならないほど深刻なようだ。娘として、あるいは嫁として、結婚していないことや子どもがいないことにわざわざ触れられ、その年で仕事をしていることを「昔っから勉強だけはできたから」「高学歴な女は田舎を出ていくんだね」などと「謙虚でない(可愛げがない)」「野心が(気が)強い」というネガティブな意味合いであてこすられた女性は、盆暮れの「女の仕事」を手伝わされながらさんざん嫌みを聞かされ消耗した心境をネット上に吐露する。

地方から東京へ、女性の流出が止まらない

出生数80万人割れの衝撃。地方の少子化対策はここがズレている」と題された記事で、ニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャー・天野馨南子さんは、地方の著しい少子化問題の真因は地方を見限った若い女性による東京への人口流出がまったく止まらないことにあると指摘している。

2010年から2019年の10年間の総務省「住民基本台帳移動報告」のデータを分析したところ、47都道府県のうち37エリアで、男女ともに転出が転入を上回る「転出超過」(純減)となっていました。女性が純減したエリアだけでいえば38エリアにのぼります。

この38エリアのうち35エリアで、女性の純減数が男性の純減数を上回っていました。全体では女性のほうが男性の1.3倍、転出超過となっています。

なかでも石川県は女性の転出超過が男性の4.6倍、富山県は3.9倍で、女性の転出超過がとりわけ深刻でした。男性に比べて女性のほうが地元にいづらい何かがある、ということが明確に示唆されているといえるでしょう。


2021年に女性が転出超過だった38エリアを詳しく分析したところ、女性の純減数が多い年齢は22歳が抜きん出て多く、次に18歳か20歳がくるのですが、20歳が次点でくるというのが女性の転出超過の大きなエリアでは多い傾向です。これは大学卒業、高校卒業、専門学校卒業のタイミングとぴったり合っています。

女性の純減全体の32%を占めていたのが、22歳です。大学を卒業するタイミングで地元を出ていく女性を「高学歴の女は仕方ない」と特例のようにとらえている中高年の人たちがいますが、2022年度の学校基本調査によると女性の四年制大進学率は52%で男性の58%とほぼ変わりませんから、もはや四大卒が特別に高学歴だといった実態ではないんです。

また、20歳での転出超過は専門学校卒にとっての就職期にあたります。幅広い学歴の女性に去られていることに気が付かなければなりません。