再犯防止プログラム参加者の明と暗
ひとつは、再犯防止プログラムに参加していた男性たちの表情が、はっきりと明と暗に分かれていたことだ。表情が明るめの参加者は発言内容もどことなく前向きで、出口に近いところまで来ているような印象を与えた。対照的なのは、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべているような参加者だ。自分のやったことを後悔しているというよりも、気持ちの置きどころがまだ見つかっていないように見えると言ったほうがいいのかもしれない。
プログラム参加者の一人は、自分には“認知の歪み”があると言い、被害女性に対して、何をすればいいのかがわからないと言った。
「私はしばらく服役していました。問題行動を起こす前から、できれば他人とは関わりも持たず、誰にも迷惑をかけたくないと思っていたのに、性犯罪に関してだけは理性が働かなくなって、感覚もねじ曲がってしまう。性犯罪はやってはいけないとわかっていたし、自分が悪いことをしたこともわかっているのに、自覚につながっていない。はっきり言ってしまえば、罪を犯しているとき、被害者のことをどうとも思っていなかった。性犯罪は、自分が望んでいることと、被害者が望んでいることは正反対です。だから、本当はどうすればいいかわかっているのに、まだ感情がついていかない。正常な価値観を持った自分になりたいと思って、このプログラムに参加しています」
問題行動を起こしている時は罪の意識がない
別の参加者は、こんなことを続けていたらいつかは捕まるとわかっていながら自分をやめられなかったと言った。
「問題行動を起こしている時は、罪の意識もありませんでした。自分はこういう人間だから、こういう性癖があるからやってるんだと都合のいいように考えて罪を犯していました。被害者には弁護士を介して謝罪文を送り、更生を誓いました。その約束を果たしたい。被害者にその姿を見せることはできませんが、約束を果たすことが大事だと思っています」
別の参加者も、同じように自分を抑えられなかったと言う。
「捕まった時はちょっと安堵したというか、これでやめられる、これで解放されると思ったんですが、ぜんぜん解放されなかった。ここで治療して自分を変えていかないと……、被害女性に対しては、まだ心の整理ができていません。身勝手なことをしたことも、全ての責任が自分にあることもわかっていますが、私がやったことの全てに謝罪していけるかというと、できないようにも思っています」