「ルイが生きた2年間は、決して悔やむばかりのものではなかった」
お父さまのごあいさつが始まります。
「皆さま、本日はルイのためにお越しくださり、ありがとうございます。実はルイに病気が見つかってからの1年、私たちの両親は何度説明してもルイがふびんだと嘆き悲しむばかりでした。ルイを見ては泣きぬれる両親を見ていて、どうすれば穏やかな気持ちでこの子たちと触れ合ってくれるだろうかと考えました」
「それで、この子たちが笑ったり泣いたりする日常の様子を映像で撮ろうと思いついたんです。ルイが生きた2年間は、決して悔やむばかりのものではなかったと知ってほしかったのです。撮り続けること1年。撮りためた映像を見た両親は、とても穏やかな表情を見せてくれました。よかったです。両親には、ルイの生きた歩みを誇りに思い、長生きしてほしいと心から思っています」
親族席に座る両家のお祖父さま、お祖母さま方は、息子さんの言葉を聞きながら深くうなずきます。
心のままにまっすぐに生きた子
「また、娘によって私たちは、生きるとはどういうことなのかを知らされた気がします。ルイの病気がわかったとき、私たちはあまりにもつらすぎて、死にたいとさえ思いました。しかし、苦しいはずのルイは、うれしいことがあれば喜び、思うようにならないことがあれば泣き、おいしいものを食べれば大喜びするというように、素直に気持ちを表現し、心のままに真っすぐに生きていました」
「その姿を見ていると、自分の死にたいなんて感情はとても罪なことだと感じたんです。私も心のままに恥じて泣きました」
喪主の話に、皆さまが聞き入っています。
「私がカメラを持つと、娘たちは喜んでついてきてくれました。それは父親の私が唯一、二人を独り占めできる時間で、本当に幸せでした。私にできることが見つかった瞬間でもありました。レンズをのぞいているときに生きる喜びを感じている自分に気づいて、これはルイのおかげだなと感謝しました」
「それからは、これまでとは違う感情が湧いてくるのを感じました。時間は永遠ではないということです。それは、ルイの時間が限られているという話ではありません。家族の時間としてとらえるようになったんです。だんだん動けなくなっていくルイが、残っている意識と感情を素直に私たちにぶつけてきてくれたのは、親として喜びでした」
「妻はいつも、2人を抱っこしたり絵本を読んであげたりしていました。決して娘たちの前では涙を見せなかった妻を、気持ちが弱い私は尊敬しています」
お母さまは、そんなことないというように静かに首を横に振りました。夫婦の絆が見てとれる場面でした。