「メタボは長生きできない」は超肥満が多い欧米の理屈

「太りすぎはむしろ長生きできる」とは言うものの、やはり程度の問題だ。体に悪い肥満はもちろんあって、肥満の度合いと心筋梗塞になる確率は明らかに相関している。BMI35以上の超肥満は寿命が短くなるのは事実だから、そんな人はたしかにやせたほうがいい。

心筋梗塞による死亡率が高い国や、糖尿病が多い国では、肥満はやはり大敵になる。欧米に関して言えば、日本人にはありえないような超肥満が珍しくない。身長170cmで体重100kgを超えるような日本人はめったにいないが、アメリカならニューヨークでもハワイでも、通りを歩けばいくらでもすれ違う。だからこそ国を挙げて「太りすぎはよくない」と啓蒙けいもうしているのである。

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「メタボは長生きできない。やせたほうがいい」というのは、欧米の背景と理論を日本に持ち込んだだけのようだ。統計によると、肥満(BMI30以上)の占める割合は、アメリカ人は2014年時点で男性35.5%、女性41%、日本人は2015年時点で男性4.4%、女性3.1%(アメリカ国立衛生統計センターやOECDのデータによる)。やせる必然性について、日本人も同じかと改めて問い直すと、案外当てはまらないことが多いように思う。

現代の日本人は終戦直後と同程度の栄養しか摂っていない

つけ加えるならば、老化の研究をしている人たちが実験対象としているのはラットやミジンコである。カロリー制限をしてラットの寿命が1.4倍に延びた、ミジンコは1.7倍になったと言っているのだ。

老化のメカニズムを探る実験としては意味のあることだし、学者も納得している研究結果だとしても、メタボを恐れてBMIを下げることに「カロリー制限すれば長生きできる」と援用するには無理がある。

日本人どころか人間に当てはまるかどうかも定かでないデータが援用されるのは、メタボブームのブームたるゆえんだが、「やせることで健康になる、長生きできる」と信じてしまうと、かえって健康を害する場合がある。

戦後の日本人の栄養摂取量の変遷を見ると、終戦翌年の1946年から高度経済成長の間はほぼ一貫して摂取エネルギー(カロリー)は増え続けている。これが少しずつ減って、2005年には終戦翌年とほとんど同じカロリーになり、以降も微減傾向が続く。

「食べすぎ」で「飽食」しているかのように信じている日本人だが、いまや戦後間もないころと同じくらいしか食べていない小食の国民なのである。