欧米に比べて心疾患で死ぬ人が圧倒的に少ない日本
最近少し減ってきたがフランス、イタリアといった例外を除くと欧米諸国の多くの国では、心臓の動脈硬化で起こる心筋梗塞などを含む心疾患が死因のトップである。心筋梗塞などの心疾患が、ガンよりも4〜5割も多いのだ。
欧米の人たちが禁煙や食生活の改善を極端なまでに推進したり、糖尿病治療に必死に取り組んだりするのは、心筋梗塞を減らせば平均寿命が一気に延びるという事情がある。「メタボ」が広く知られるようになったのは1998年にWHOが「メタボリック・シンドローム」の名称で診断基準を発表してからだが、その概念は欧米の研究者によって1980年代から盛んに提唱されていたものだ。つまり、動脈硬化を遅らせて心筋梗塞を減らしたいという究極の目的がある。
一方、日本人の三大死因と言われるガン・心疾患・脳血管疾患で、死亡総数に対するガンの割合は約27%、心疾患は約15%、一時期死因のトップだった脳血管疾患が約7%で老衰に抜かれて4位になっている。心疾患はガンの半分程度である。つまり日本は「心疾患で死ぬ国」ではないのである。
それなのに、欧米型の健康キャンペーンを移入することに誰も異を唱えない。
「肉を食べすぎるのは体に悪い。減らそう」というのも健康常識と捉えられているけれども、もともとは心筋梗塞が国民病とも言えるアメリカ由来の健康キャンペーンだったのだ。
日本人の食生活がいくら欧米化したといっても、実際の欧米人の食生活は大きく異なっている。たとえば肉を食べる量ひとつとってみても、極端に違う。
日本人はもっとたくさん肉を食べたほうがいい
日本人の肉類の摂取量を見ると、国全体が貧しかった時代はもちろん、飽食と言われる時代になっても、実はそれほど肉を摂っていない様子が読み取れる。終戦直後の飢えている時期は、肉類を1日にわずか5.7gしか食べられなかった。魚が45.3gほどで乳製品は3.1g、米が241.1gといった状態で、ここから日本人は再出発したのだ。
「経済白書」に「もはや戦後ではない」と明記されたのは1956(昭和31)年。飢えは脱していたが、私の生まれた1960年でも、肉は20gも摂っていない。高度経済成長を経て、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるようになった1980年ごろから、肉を減らすように言われ始めるのだが、この時点でも肉の摂取量は67.9gにすぎない。
近年、日本人の肉の摂取量は1日あたり100g前後である。一方、アメリカ人は約300g、ヨーロッパ人なら約220gも食べている。その前提があって、ヨーロッパでは目標値を150gにしたのだ。
そもそも前提となっている肉の摂取量が極端に違うのだから、減らせばいいというものではないことは誰にでもわかる。
少なくとも日本人の場合、肉の摂取量を減らす必要はないのである。むしろ増やしたほうがいいと考えられる。