近年の記憶で最も鮮烈な例は、00年選挙でブッシュ当選に尽力したテキサス州の友人の扱いである。バンドラーとして集金力が秀でていたマーサー・レイノルズ氏という人物は、ブッシュ氏と大リーグ球団テキサス・レンジャーズの共同経営者を務めた男でもあった。当時6000万円以上を束ねてきていた。
ブッシュ氏が当選した後は大統領就任委員会に入り、なんと40億円という大金を集金した。その見返りとして、レイノルズ氏はスイス大使に任命される。選挙で力を尽くした返礼である。
そうした中、シカゴにあるオバマ選対本部はすでにロムニー選対より数カ月も早く動き出していた。12年1月、ロムニー氏がまだ共和党の他候補との戦いにエネルギーを費やしている段階で、本部には給料が出ているスタッフだけで200人以上がいた。この数はブッシュ前大統領が再選を目指した04年のスタッフの2倍以上である。
選挙は有権者一人一人の票の集積だが、選挙資金の多い少ないで結果には雲泥の差がでる。日本であれば、テレビで顔の売れた橋下大阪市長や石原東京都知事が他候補ほど選挙活動をしなくとも当選する現実があるが、米国ではほとんど機能しない。
オバマ氏もロムニー氏もすでに全国区の顔である。両者を知らない人はいない。あとは、どれだけ有効に資金を集め、さまざまな分野で効率的に使えるかがカギとなる。
その分野で動き回るフィクサーたちの動きが、実は大統領選で重要な役割を演じていることを忘れてはならない。
※すべて雑誌掲載当時