次々と商品をカートに入れる“怪しい3人家族”

万引き家族の背景には貧困問題などが存在すると思われますが、それでも親が子を使って盗みを働くという行為の裏には親子の情愛を踏みにじる卑劣で姑息な欲望が透けて見え、どうにもやるせない気持ちにさせられます。

一方で万引き家族が犯す犯罪の中には、家族ならではのチームワークに驚かされるケースもあります。

【事件2:“仮病”万引き家族】(GメンAの場合)
日南休実『万引きGメンの憂鬱』(ザメディアジョン)

現場はとあるホームセンター。これも家族は3人で、白髪交じりのおばあちゃん、その息子らしき中年のお父さん、おばあちゃんにとっては孫にあたるハタチ前後の娘の3人組。この一家も罪状は大量窃盗ですが、彼らが大胆なのは1人1台カートを持ち、そこに24本入り缶ビールケース、ペットフード、洗剤、日用品……など各自が好きなものをドンドン投げ込んでいった点です。

通常家族で店に来た場合、使うカートは1台なのに、それぞれがカートを持ってしかも同じ商品をいくつも入れている――この時点で私は「これは怪しい」と踏んでマークしていました。

「救急車を呼んでくれ~~~~!」

彼らは声掛けをした時点では抵抗することなく裏の事務所についてきました。しかし問題はこれからでした。いざ警察を呼ぶとなると、なぜか3人がかわるがわる体調を崩していくのです(笑)。

最初は中年の息子が「具合が悪くてトイレに行きたい……」と言い出しました。そしててんかんの発作が起こったといい、床に倒れて暴れ回ります。それを店長が抑え込もうとしていると、今度は若い孫が過呼吸を起こしました。「袋、袋……とにかくビニール袋を!」。そう言われた店員がアワアワしていると、最後はおばあちゃんです。「気分が悪い……救急車、救急車を呼んでくれ~~~~!」。

写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

この時事務所はもうパニックです。救急車は到着するしパトカーは着くしの大わらわ。それで一家は警察ではなく病院に連れていかれて……最終的には全員仮病ということが判明しました(笑)。彼らの間では、「もしも捕まった場合はこうしよう」という打ち合わせがあらかじめなされていたようでした。