「登録義務化」直後はコメント数の鈍化傾向も

今回の携帯電話番号登録の義務化は、発信者のリアルなひも付けを強化する対策だ。

違法・有害情報、さらに情報工作にも一定の効果は期待できるだろう。ただ、実名が原則のフェイスブックでも違法・有害情報や情報戦は、なお大きな課題となっている。組織的な情報工作であれば、複数の携帯電話を使うことは容易だ。

今回の措置は、どの程度の効果があったのか。ヤフーは「運用を開始したばかりで十分な数値が出そろっていない」(広報室)という。即席の手がかりとして、Yahoo!ニュースの1時間あたりのコメント数でランキングした「コメントランキング」を見てみる。

携帯電話番号の義務化が導入されてから3日後の11月18日(金曜日、15:24現在)では、トップは「北朝鮮ミサイル発射」(721件/時)、2位は「ゆたぼんパパ激怒」(674件/時)、3位「中日・DeNAの交換トレード成立」(551件/時)だった。

前年の2021年。コメント欄の自動非表示機能を実施してからほぼ1カ月後の11月18日(木曜日、18:45現在)では、トップが「小室圭さん、解決金振り込み」(855件/時)、以下は「新庄剛志監督に清原和博氏が不快感」(795件/時)、「児童手当、世帯合算に否定的 公明幹部」(736件/時)。

さらにその前年の2020年。「投稿停止措置」ユーザーのID再取得による投稿制限措置から約1カ月後の11月18日(水曜日、23:49現在)では、トップは「コロナ急増、Gotoトラベルが『きっかけ』 日本医師会長」(2183件/時)、「豚解体容疑の技能実習生、全員を不起訴処分に 前橋地検」(1281件/時)、「全国で2100人超の感染確認、過去最多」(1203件/時)となっていた。

社会状況や時間帯、ニュースのインパクトもまちまちのサンプルで、あくまで雑駁ざっぱくな一応の目安でしかないが、ランキング上位の時間当たり投稿件数には、減少傾向らしきものもうかがえる。

ツイッター投稿の検索機能を提供するヤフーリアルタイム検索で「ヤフコメ」を検索すると、ユーザーが「ヤフコメ」とともに頻繁に検索するキーワードとして表示された候補には、「電話番号」「変わった」「減った」なども目につく。

コメント欄維持のためには対策が必須

ヤフーは、1996年から続くポータルサイトだ。その基本的なつくりは、大量の情報を整理して発信する「ウェブ1.0」といえる。2000年代半ばに登場したユーザー参加型の双方向サービスの潮流「ウェブ2.0」の中で、ネットは一気にソーシャルメディアへシフトした。その中でソーシャル機能を埋め込むように作り込んだのがYahoo!ニュースのコメント欄だった。

Yahoo!ニュースの「コメント 取り組みまとめ」というページには、2015年以来、ほぼ毎年のように打ち出されてきた対策の経緯が列挙されている。それでも、今回の新たな対策が必要だった。

ヤフーにはこのほかに、「知恵袋」「ファイナンス 掲示板」などの双方向サービスがあり、持ち株会社のZホールディングス傘下にはメッセージサービスのLINEもある。ただ、Yahoo!ニュースのコメント欄を閉じれば、「ウェブ1.0」の骨格が目立つことにはなるだろう。コメント欄を維持するために、ヤフーは次にどんな対策を打ち出すのか。

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