ヤフコメはロシアの「情報工作」として利用されてきた
Yahoo!ニュースのコメント欄は、海外からの情報工作の舞台としても指摘を受けてきた。
英カーディフ大学の研究チームは昨年9月に公表した報告書で、欧米や日本の大手メディアサイトのコメント欄を標的に、親ロシアの「読者コメント」を書き込む情報工作が行われている、と指摘。さらにロシアの政府系メディアが「読者コメント」を含んだ形で「記事転載」を行い、プロパガンダとして拡散される実態を明らかにした。日本でその主な舞台とされたのが、Yahoo!ニュースのコメント欄だった。
※参照:メディアの「コメント欄」が情報工作の標的になる(09/27/2021 Yahoo!ニュース個人・平和博)
カーディフ大の研究チームが指摘したような、Yahoo!ニュースへの掲載ニュースとロシア政府の立場と親和性のあるコメントがセットで、同じロシア政府系メディアに転載される状況は、本稿執筆時点でもなお確認できた。
重要度が高まる「サイバー安全保障」
今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、武力攻撃に加えてサイバー攻撃、情報戦を連携させたハイブリッド戦に注目が集まっている。
国内では、防衛力強化に向けた政府の「安保3文書」改定のために、年初から行われた「有識者との意見交換」においても情報戦はテーマの一つとなっており、筆者も7月にこの意見交換に参加した。その後、政府に設置された「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が11月22日に公表した報告書でも、サイバー安全保障は主要論点の一つだ。
防衛省は3月に「サイバー防衛隊」を発足させ、4月には情報戦の担当官「グローバル戦略情報官」を新設した。また、政府はサイバー攻撃への防御を強化するため、国家安全保障局(NSS)の下に内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を取り込んだ司令塔組織設置を検討している、とも報道されている。
ヤフー広報室は情報工作の指摘について、「安全保障問題に発展するケースもあり得るという問題意識」をもち、投稿に関する分析調査を実施しているとした上で、「少なくとも現時点の分析結果としては、Yahoo!ニュースのコメント欄において組織的なプロパガンダ工作であることが疑われるような事象は確認されていません」としている。