失策を認めないまま「ゼロコロナ」緩和へ
「3年間におよぶコロナの影響で、学生や10代の若者たちに不満がたまっていた」
習近平は12月1日、EUのミシェル大統領と会談した際、中国の主な都市で拡がった「ゼロコロナ」政策に対する抗議行動についてこのように説明した。
抗議行動を長期化するコロナ感染の結果と位置づけた習近平。コロナそのものよりも、ロックダウンなど厳しすぎる規制への不満、そして何より、自由に声すら上げられないストレスが抗議行動に走らせたことを、習近平は理解できていない。
逆を言えば、「一強体制」を築いた「裸の王様」には、側近から耳当たりの良い報告しか上がっていないとも推察できる。
ただ、上海や重慶など主な都市では、ここ数日でうそのように「ゼロコロナ」政策のよる規制が解除された。首都の北京こそ、いまだに建物に入る際、PCR検査での陰性証明の提示が不可欠となっているが、緩和されるのも時間の問題だろう。
こうした事実から見ると、習近平指導部は、「ゼロコロナ」政策の失敗は認めず、国民の「ガス抜き」を図るために、政策の見直しに舵を切ったと言っていい。
「アメ」で抗議行動は収束するだろうが…
その一方で、習近平指導部は、抗議行動の再発と拡大防止に向けて、警備の厳重化やSNSなどに対する検閲の強化は継続し、「アメとムチ」の方針で臨んでいる。
今回の「ゼロコロナ」政策に対する抗議行動は、習近平指導部がまいた「アメ」によって、いったんは収束に向かうと見る。
抗議行動の目的自体が、天安門事件のような「中国の民主化」などといった大げさなものではなく、天安門事件で若者を牽引した王丹氏のようなリーダーも存在しないからだ。
「前触れもなく地域を封鎖したり、ネットの検閲を強化したりしないでほしい」という小さな要求さえ満たされれば、白いA4サイズの紙を掲げての「白紙運動」と呼ばれる抗議行動は、習近平指導部を揺るがす「革命」に発展する前に鎮静化していくはずだ。