夫婦がほぼ同時に会社員を辞める選択ができた理由

もう一つ「見える化」して大きな効果があったのは、「どういうところが不安なのか」が具体的な金額で示せるようになったことで、私の不安な気持ちを本当の意味で夫と初めて共有化できたことです。モヤモヤを一人で抱えなくてよくなり、楽になったのを覚えています。

大江英樹、大江加代『定年後夫婦のリアル』(日本実業出版社)

「見える化」して課題が明らかになれば、あとは二人で対策です。

わが家の場合は、私が家を買うために貯めていた金融資産について、それを生活費には一切回さず温存し、さらに少しずつ増やしていけば、将来、私が医療や介護でまとまった資金が必要になってもなんとかなるだろう、ということになりました。

見える化して得られた「安心感」があったからこそ、夫婦して一気に会社員としての立場を捨てるという、崖から飛び降りるような選択をすることができたのです。

老後のお金は、寿命なども影響するため、その収支は本当にわかりません。

それでも、いくつかのパターン(90歳や100歳まで生存した場合など)を具体的にシミュレーションしてみると、霧が晴れたようにスッキリすると思います。

なかには、「金銭的な手当てを考えなければいけないことが判明しモヤっとした」という厳しい現実を見ることになるかもしれません。その場合も、計画していたリフォームや定年時のご褒美旅行などの大きな出費にかける金額を少し減らすといった対策もできます。

出費をした後で「もっと早くわかっていれば○○しなかったのに」というような後悔を避けるためにも、未来に向けた行動を選択できるようにするためにも、50代のうちに老後のお金の「見える化」をしておくことはとても大切だと思います。

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