老後のお金、夫ほどには楽観的になれず【妻・加代の視点】

夫は定年以降のお金に関して「心配ない」と当時も言っていましたし、著書にもそう書いていますが、私自身は正直不安がありました。

自分に一定の定期収入があり、その範囲で暮らすことしかやってこなかっただけに、夫の収入、それも年金で暮らすということにリアリティがなかったからです。

そこで、徹底的に数字、つまり金額に落とし込んで、私が90歳まで生活していけるのかを「見える化」してみました。

老後のお金の収入の柱は公的年金ですが、条件によって受取額が変わります。

例えば、共働き夫婦の場合、二人とも生きていれば、それぞれ老齢基礎年金と老齢厚生年金がもらえるため、年金もダブルインカムとなります。

しかし、片方が亡くなれば老齢基礎年金は一人分になりますし、老齢厚生年金ももちろん支払われません。厚生年金部分はその4分の3が遺族厚生年金に衣替えしてパートナーに支払われるのですが、私の厚生年金額を上回った部分しか受け取れません。

つまり、夫が死ぬと遺族である私の生活収入が激減するわけです。

また、加給年金という公的年金版の家族手当は、夫が厚生年金を受け取り始めると年間39万円くらい支給されるのですが、これも私が65歳になると受け取れなくなるのです。

夫婦で老後資金をためているイメージ
写真=iStock.com/RomoloTavani
※写真はイメージです

企業年金や退職金も条件いろいろ

勤め先の企業年金や退職金も条件がいろいろ異なります。

例えば退職事由が、定年か自己都合退職かによって金額が異なるというのはよくある話だと思いますが、企業年金では、一時金と年金を一定の割合で組み合わせて受け取れたり、年金で分割して受け取る年数を選べたりと、いろいろな選択肢があります。

夫の勤めていた会社の企業年金には年金で受け取る際に保証期間というものがありました。一時金と違って年金で受け取る場合は公的年金同様に本人が亡くなった時点で年金支払いがストップされるのが普通ですが、受け取り開始してまもなく亡くなったとしても、この保証期間の間は遺族に年金額の支払いが継続されるというものです。

ここでも“夫が何歳で亡くなるか”ということが遺族となる私の生活収入に影響することがわかりました。

そう考えると、老後の収入を前もって正確に計算することは事実上、不可能なのです。