ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレは、複数の映像や専門家の見解を基に、事件を独自に分析している。それによると、建物封鎖のバリケードが障害となり、消防車が現場に近づくことは困難であったという。消防士らは遠方から放水を試みたものの、高層マンションの15階以上という火災現場に水は届かなかった。
また、非常階段は南京錠で施錠されており、住民の避難を妨げたおそれがあると指摘されている。残された避難手段は、火災時には使用すべきでないとされるエレベーター2基のみだ。
ところが電気火災を恐れたためか、駆けつけた当局職員は建物への電力供給を遮断した。こうして最後の望みであったエレベーターも停止し、住民たちは燃えさかる建物内に閉じ込められることとなった。
通院できず流産、リストラ、飛び降り…
中国政府は、ゼロコロナが犠牲者を増加させたとの見方を否定している。また、あろうことか消防当局は、非難の遅れは犠牲者たちの責任だとの見解を示した。米ワシントン・ポスト紙によるとウルムチ市の消防団長は、「一部住人の自己避難能力はあまりにも低かった……そのため避難に失敗した」と発言している。
この経緯が報じられると、中国の民衆の不満はついにピークに達した。同紙は、「当局による回答は、ネット上の怒りに拍車をかけるのみであった」と報じている。事件の動画は広く拡散され、かねてゼロコロナに苦しめられていた国民は、中国全土で蜂起することとなる。
ウルムチでの火災以前にも、ゼロコロナに関する事故や抗議はたびたび発生している。中国共産党はその都度、徹底した検閲体制を敷いて民意を抑圧してきた。
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国各地で大規模なロックダウン(都市封鎖)が相次いでおり、今年だけでも2億から4億人の中国市民が何らかの形で影響を受けたと報じている。
4月からは上海で、2カ月間にわたる長期のロックダウンが上海で実施された。住民たちは食料の入手もままならないなど、想像を絶する不自由を迫られている。同紙は、通院が不可能となり流産した妊婦や、職を失った人々、精神的問題を抱えてマンションから飛び降りた幾人もの人々など、悲惨な事例を取り上げている。
英紙「犠牲者の数はコロナ関連死をしのぐものだ」
人々の命を守るはずの検疫が悲劇を招いたこともあった。南部貴州では9月、市民47人を隔離施設へと連行していたバスが道中で激しく横転した。中国共産党の機関紙である人民日報は、27人の死亡を認めている。残る20人も重軽傷を負った。
CNNは、中国のソーシャルメディア「Weibo」で共有された事故車両の写真を掲載している。バスは上半分がほぼ完全につぶれ、屋根はまるでアルミ箔を握りつぶしたかのようなクシャクシャの状態だ。