「統一教会問題」だけではない

新法を成立させれば、それで岸田内閣がひと息つけるのか、というとそうではない。最大の焦点は「防衛費」とその財源を巡る「増税」問題だ。

岸田首相は5月に来日したバイデン米大統領に「防衛費の相当な増額」を約束したが、それ以降、一向に具体的な金額を明示しなかった。7月の参院選の自民党の公約には「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」としたが、その後も、「金額ありきではない」として、いくら増額するのかは明らかにしなかった。

11月28日になって「防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に指示。初めて2%という数字が公式に政府の方針として出てきたが、2023年度予算で防衛費をいくらにするのか、その財源をどうするのかについては、「年末までに」として、一向に語ろうとしていない。

国会開会中に防衛費の具体的な増額を打ち出せば、野党の攻撃が激しさを増すのは火を見るよりも明らか。防衛費増額は国民の間でも賛否が分かれる問題で、ここで強引に大きな金額を示せば、政権批判がさらに燃え上がることになりかねない。国会が閉まるまで国民の間には具体策を見せない、という判断なのだろう。

写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

「財政は赤字」「景気も悪化」財源はどうするのか

防衛費を増額すれば、「財源」が問題になる。これについても首相は明言を避け続けている。仮に、防衛費の大幅増額に国民の理解を得たとしても、そのために増税すると言えば、反対に回る人も少なくない。防衛費増額を主張する自民党タカ派の議員たちの間でも、2023年度から増税は行うべきではない、という声が支配的だ。

ではどうするのか。増額は決めて、財源は先送りするのか。政府が頭をひねっているのは、予備費など現在の予算で余っているものを集めて当面の財源とする案だ。一見、うちでの小槌のように見えるが、結局は真正面から議論せず、国民の目を誤魔化すことに他ならない。2024年度以降は増税で賄うべきだという意見も出ているが、それを言い出せば、国民議論は大きく割れることが必至だ。

そうでなくても財政赤字が続いている中で、経済対策などに大きな予算を割いている。その効果で来年度は景気が急回復するのならともかく、円安水準の定着や、物価の上昇など、問題はむしろ悪化が懸念されている。景気悪化の中で増税議論を行うとなれば、そうでなくても下落が止まらない支持率がどこまで下がるか。