なぜ党内で「岸田おろし」が起きないのか

いずれも内閣支持率が30%前後になったことで、首相には大きなプレッシャーがかかったということだろう。岸田首相も33%だから、相当追い込まれていることは間違いない。

11月21日の夜の会合で「今はちょっと孤独でつらい時もある」と漏らしたと報じられた。

背景に支持率低下があることは間違いない。政権に厳しいとされる毎日新聞の調査では、10月に内閣支持率が27%にまで低下。自民党支持率も24%となり、あわや「青木率」にヒットするスレスレになった。毎日の調査はおかしいのではないかという声まで出るほど衝撃が走った。11月はやや支持率を戻したが、それでも毎日の調査は支持率31%、不支持率62%という数字だった。

ここまで支持率が低下しているにもかかわらず、自民党内からは「岸田おろし」の動きが本格化しない。要因は、最大派閥で安倍元首相が率いてきた清和政策研究会は、後任会長を絞り込めないままで、自ら総裁候補を担ぎ出せる状態にないことが大きい。

来年の統一地方選挙を控えて「岸田首相では戦えない」という声も出始めているが、「では誰がいいか」となると声が消える。党内にも満場一致で首相に担ぐことができる玉がいないのだ。また、岸田首相に代わって自分が首相になろうと声を上げる議員も出てこない。

「野党はあら探しをしているだけ」

もうひとつの理由は、野党が弱いこと。立憲民主党と維新の会の接近などはあるものの、国政選挙がない中で、本格的な共闘関係は築きにくい。閣僚を相次いで辞任に追い込んでいるものの、政策で成果を上げたわけではなく、あら探しの批判だけをしているように有権者の目には映る。

そんな野党を自民党議員は本気で恐れていない。岸田首相で何とか踏ん張れるのではないか、と見る議員も少なくないのだ。

その岸田内閣の目下の懸案は、燃え盛る旧統一教会問題を何とか沈静化させること。前出のNHKの調査でも、「旧統一教会問題での岸田首相の対応」について「大いに評価する」は2%、「ある程度評価する」の23%を加えても全体の4分の1に過ぎない。「まったく評価しない」が28%に達し、「あまり評価しない」の37%を加えると3分の2が厳しい評価を下している。

これを覆す切り札と政権が見ているのが、悪質献金を規制する新法の制定。当初は国会に提出を「目指す」として、やや腰が引けた印象だったが、支持率の低下とともに、国会に提出するだけでなく、成立させることが至上命題になった。NHKの調査でも新法を「今の国会(臨時国会)で成立させるべき」という回答が55%に達し、「必ずしも今の国会にこだわる必要はない」の32%を大きく上回った。

岸田内閣は新法を12月1日に閣議決定。12月10日までの国会会期を延長してでも何とか成立に漕ぎつけたい考えだ。万が一にも継続審議になれば、国民の岸田内閣への批判がさらに高まることになりかねない。ただ、国会を延長すれば、秋葉大臣への疑惑追及が続く上、新法の中味についても野党の批判をかわし続ける必要が出てくる。