「ああ俺は何をやってるんだろう」
——そこをズバッと突いてくる憲剛選手も、かなりのものですね。
【村井】最初に思ったのは「彼は自分自身のドライバーズシートに座ってるな」ということです。私はチェアマンになってから、いろんな人にああ言われ、こう言われて右往左往しているようで、自分で自分のハンドルを握っているような感覚があまりありませんでした。
一方で憲剛選手たちには「チェアマンやリーグに言われようが言われまいが、俺たちはこうやるよ」っていう、自分の人生とか社会とかに対する強烈なオーナーシップを感じたんですよね。それが羨ましくもあり、「ああ俺は何をやってるんだろう」と思いました。
——村井さんがいたリクルートにも「圧倒的当事者意識」という言葉がありますよね。創業者の江副浩正さんは会社や上司の不満を言っている社員を捕まえては「何が気に入らないの?」と聞き、社員が不満をぶちまけると「じゃあ、君はどうしたいの?」と聞きました。「あそこはこうすればいい。ここはこうすべきだ」と社員は思いの丈を語ります。しばらくすると江副さんはこう言うんですね。
「じゃあ予算と人をつけるから、それ君がやってよ」
社員はびっくりしますが「だって君の言う通りなんだから」と江副さんは任せてしまう。評論家を当事者に変える江副マジックの一つです。
批評より提案、評論より行動である
【村井】批判より提案、評論より行動です。やはり自分の人生は自分のオーナーシップ、自分のドライバーズシートに座って、事故に遭うかもしれないけれど自分でハンドルを動かしていくことが大事だな、と思います。やれば何か言われるかもしれないけど、まずやってみる。憲剛選手の一言で、その気持ちを思い出しました。
それで社会課題解決に向けてチャレンジしている人や地域創生に取り組んでいる人々に出会っていきました。その中で縁があったのが米田惠美さんです。リクルート時代から面識はありましたが、単なる会計士、経営コンサルというよりも社会課題を知るために自ら保育士の資格を取得したり、在宅診療所にも従事したりする現場目線を大事にする実践家でした。