プロ野球の観客動員数がコロナ前の8割程度にとどまっている。スポーツライターの広尾晃さんは「テレビ中継はなくなったが、各球団が地元ファンの掘り起こしを続けた結果、観客動員はコロナ前まで増え続けていた。だが、その戦略も限界に達しつつある。ファンの動員を増やすのではなく、ファンそのものを増やす必要がある」という――。
空席が目立つプロ野球・巨人-中日戦の観客席=2022年8月24日、東京ドーム
写真=時事通信フォト
空席が目立つプロ野球・巨人-中日戦の観客席=2022年8月24日、東京ドーム

フル動員が解禁になったのに、満席にならない

今春のオープン戦、筆者の隣の席にお客が座って、ぎょっとした。過去2年間、感染症対策でNPB球団はチケットを1~2席おきにしか販売しなかった。だが、今季から観客のフル動員が解禁になった。

ゆったりした観戦スタイルに慣れていただけに、久々の文字通り「肩身の狭い」試合観戦に驚いたのだ。そして「あの喧騒が戻ってくるのだ」と思ったのだが……。

シーズンは終盤を迎えているが、喧騒はなかなか戻ってこない。今季も50試合近く見ているが、満員御礼の試合は1~2試合あった程度か。あとは感染症対策をしていた昨年までとさして変わらぬ「ゆったり観戦」になっているのだ。

NPB史上最多の観客動員を記録した2019年と今年の球団別の平均動員数を比較してみよう。(2022年は9月23日時点)

セ・リーグ 3万4655人→2万8179人(81.3%)
ヤクルト 2万7543人→2万2224人(80.7%)
阪神 4万2935人→3万6283人(84.5%)
巨人 4万2643人→3万2199人(75.5%)
広島 3万1319人→2万7796人(88.8%)
中日 3万1741人→2万5178人(79.3%)
DeNA 3万1716人→2万4568人(77.5%)

パ・リーグ 2万7203人→2万0636人(75.9%)
オリックス 2万4423人→1万9726人(80.8%)
ロッテ 2万3463人→2万0562人(87.6%)
楽天 2万5659人→1万8699人(72.9%)
ソフトバンク 3万6891人→3万0928人(83.8%)
日本ハム 2万7368人→1万7295人(63.2%)
西武 2万5299人→1万6429人(64.9%)

NPB 3万0929人→2万4417人(78.9%)

9月に入ってお客は入り始めているが、2019年と比較すると8割弱しか入っていない。2019年は史上最多の2653万人余りを動員したが、今季は2095万人程度にとどまりそうだ。

無観客試合もあった2020年は482万人、入場制限をした2021年は784万人だったから2.5倍増ではあるが、2019年の数字には程遠い。「V字回復した」とはいえないだろう。

落ち込みはセ・リーグよりパ・リーグのほうが激しい。日本ハムは63.2%だがこれは交流戦前まで観客動員数を2万人に制限していたことも一因だ。また西武も64.9%と動員に苦しんでいる。