野球離れの構造
12球団のヘビーユーザーを中心にした濃厚なマーケティングは効率的でレスポンスも良かったが、そろそろ「マーケティング疲れ」に近い状況になりつつあった。
その矢先の「コロナ禍」で、ファンは「球場に行く」というルーティンから遠ざかった。感染症対策で「思い切り応援できない」ことも、マイナス要因となった。
そして地方での「プロ野球離れ」も加速した。さらにいえば野球ファンの高齢化も進んだ。コロナ禍が契機となって「野球離れ」が加速する可能性はかなり高いのではないか。
より地域密着にこだわるべき
福岡ソフトバンクホークス取締役として、「球界再編」後のプロ野球の新たなマーケティング戦略を主導し、今年9月に『サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学』(新星出版社)を上梓した桜美林大学の小林至教授はNPBの現況をこのように見ている。
「日本のプロ野球って“お祭り”なんですね。毎日来るような人は別にして、年に何回か来る人はみんなで一緒に同じ振り付けの踊りを踊って応援歌を歌い、風船を飛ばして発散していた。それができないから、行っても面白くない、という方は多いでしょう。そうこうしているうちに別のエンタメを見つけてしまった方もいるかもしれません。
また地方での試合興行が減少したのは、主たるプロモーターだった地域のテレビ局の体力が低下していることも大きいと思います。スポンサーを含む取引先にチケットを買ってもらうのも難しくなった。
NPBは球界再編後に“地域の娯楽”としてよみがえりました。私がいたソフトバンクがそうですし、日本ハムや楽天もそうです。DXも大事ですが、プロ野球興行の大黒柱はコロナ後もやっぱり来場客であり、地域密着なのです」