慢性胃炎に気づかず放置すると胃がんに

おもにピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)によって起こる「慢性胃炎」は、その名の通り慢性炎症による病気のひとつです。

多くの場合、ピロリ菌は子どものころに感染すると言われていますが、感染すると多くの人は胃炎を発症します。けれども、そのとき自覚症状がある人はほとんどいません。

胃炎というと、胃がキリキリ痛んだり、胸焼けや吐き気が起きたりといった症状を思いうかべるかもしれませんが、それは暴飲暴食やアルコールのとりすぎなどによって起こる急性胃炎(急性炎症)です。

ピロリ菌による慢性胃炎の場合は、胃もたれやむかつきなどの症状が出ることもありますが、強くなかったり、人によっては症状がないこともあるのです。

自覚症状がないなどの理由で、慢性胃炎の状態を放っておくと、慢性肝炎と同じように胃の粘膜の組織が変化して、うすくやせて萎縮する「萎縮性胃炎」になることがあります。さらに、胃粘膜の萎縮が進むと、そこががん化して胃がんになる人がいることもわかっています。

血管の慢性炎症は心筋梗塞・脳梗塞のリスク

動脈硬化は、弾力があってしなやかな血管が、硬くもろくなることです。新品のホースはやわらかく弾力がありますが、古くなったホースが硬くなって破れてしまうようなものですね。

いままでは、血管の中に過剰な脂質がたまることが原因とされてきましたが、最近では、慢性炎症がその発症や悪化に関係していることがわかってきました。

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内臓脂肪型肥満などによって血管に慢性炎症が起こると、血管の壁が傷つき、そこにコレステロールが入り込みます。すると、これを排除するために白血球が集まってきて、コレステロールを食べます。

結果、コレステロールを食べて死んだ白血球の死骸と、残ったコレステロールがたまって、血管壁にコブ(プラーク)ができてしまいます。このとき、血管の線維化も起こって、血管が硬く、柔軟性がなくなってきます。

慢性炎症が続けば、血管にできたコブは大きくなり、動脈硬化が進行していきます。最終的にプラークが破裂すると、その傷口を修復するために血液のかたまりができて、それが血栓となり、血管をつまらせてしまうことに。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞となってしまうのです。