都内に巨大ビル型納骨堂が30棟、外資系金融会社も参画
現在、東京都内には「自動搬送式納骨堂」と呼ばれるタイプの巨大ビル型納骨堂が30棟ほどあるといわれている。自動搬送式納骨堂とは、ICカードをかざせば納骨カロートが自動的に運ばれてきて、参拝ブースでお参りができるハイテク納骨堂だ。
待ち合いロビーなどもシティホテルを思わせるようなしつらい。その分、ロッカー式納骨堂に比べて、割高ではある。「主要ターミナルからも近く至便で、買い物ついでに、仕事帰りの墓参りもできるハイテク納骨堂」が、“売り文句”だ。
多死社会や改葬ブームを背景にして10年ほど前から、大手葬儀会社や大手仏具・石材販売会社は寺院とタイアップして、この自動搬送式納骨堂事業に乗り出してきた。近年では、外資系金融会社も納骨堂事業に参入していた。1棟あたり、数千基から1万基以上の規模感である。札幌の納骨堂とは比較にならない納骨数だ。1棟あたりの建設費は数十億円に上る。
最初はよかった。だが、数年もすれば納骨堂の供給過多になり、需要が追いつかなくなってきて、民間企業の経営を圧迫してきた。地方都市の自動搬送式納骨堂では破綻事例も出てきている。
仮に都内の巨大自動搬送式納骨堂が破綻したり、競売にかけられたりした場合は、札幌の事例とは比べものにならないほどの混乱が生じるだろう。アナログのロッカー式納骨堂とは違い、自動搬送式納骨堂はコンピューター制御であり、通電が止まり、システムが動かなくなれば遺骨の取り出しは難しくなる。
「自動搬送式納骨堂神話」が崩壊すれば、不安心理が増大して顧客離れが進み、雪だるま式に納骨堂が破綻していく危険性もある。札幌の納骨堂破綻が、その呼び水にならないことを願うばかりだ。
同時に消費者も、安易な形で始められた民間業者と宗教法人の納骨堂ビジネスには、深い闇とリスクを抱えていることを知っておくべきだろう。