「Jリーグ初の無観客試合」を決断
【村井】それで広島と川崎の社長に「来てください」と電話したら「呼びつける前に要件を教えてよ」という。八百長の場合、組織のトップが関与している可能性もあるので、要件は言えません。「とにかく来てください」と言ったら、2人は、それぞれACL(アジア・チャンピオンズリーグ)の試合で韓国とオーストラリアにいました。そんなスケジュールさえ頭になかったのです。失礼な話です。結局13日のお昼に2人に来てもらうことになりました。
――「人種差別問題」のほうは。
【村井】同時進行ですよ。レッズに制裁を科すにはJリーグで諮問委員会を開かなくてはなりません。ところが事務局は「全部の委員を集めるには数カ月先になる」と言う。そんなのんきなことは言っていられないので、私がすべての委員と電話で話して、特急で諮問書を作って「これでいいですね」と同意を取り付けました。
――結論は?
【村井】Jリーグ初の無観客試合です。レッズのサポーターは過去にも同じような問題を起こしているので累犯です。制裁金はすでに課していたので、その上となるとルール上、無観客試合になるのが相当です。コロナ禍の時に、Jリーグを含めいろんなスポーツで無観客試合がありましたが、それよりずっと前の話ですからね。社会的反響はどうなるか想像もつかない。
逆境の時こそ、逃げも隠れもしてはいけない
【村井】対象になるレッズの次のホームゲームは、2週間後に控えた清水エスパルスとの試合でした。浦和も清水も日本屈指のサッカーどころです。サッカー王国の清水からは毎年、エスパルスサポーターが浦和に大挙してやってきます。みんな新幹線も予約したしホテルもとった。清水サポーターの子供たちは毎年、浦和に行くのを修学旅行のように楽しみにしていた、と後で聞かされました。
――それでも「無観客」と決めた。
【村井】「しっかりと事実関係を調べてから判断します」とか、もっともらしいことを言って時間を稼ぐこともできたかもしれません。でもそうやって逃げてはいけないと思いました。リクルート事件の時、私は入社6年目でしたが、先輩たちがみんな「カモメのバッジを外すな」と逆風に立ち向かっていたのを見てきました。逆境の時こそ、逃げも隠れもしない、というのが大切なんです。
それで話は新聞の一面に載るような騒ぎになっていましたから、世間に対しても自分の言葉で何かしらの説明をしなくてはなりません。それで13日の午前に浦和社長の淵田さんをお呼びして「無観客試合」の制裁を正式に伝え、午後1時から記者会見を開くことになりました。