「常時あなたを撃とうと構える銃」、検問所にも

スマート・シューターはまた、パレスチナの都市・ヘブロンにあるシュハダ通りにも設置された。イスラエルメディアのハアレツ紙による情報を受け、ユーラシアン・タイムズが報じている。

この界隈では暴動が繰り返し発生しており、2重の高いフェンスで区切られた検問所がある。銃は検問所内の高所に設置され、通過する人々を見下ろしている。

パレスチナ人政策アナリストのマーワ・ファタフタ氏はTwitterにAI銃の存在を警告する動画を投稿し、「これよりディストピアなものはないだろう」とコメントした。

動画は「常時あなたを撃とうと待ち構えている自動操縦の兵器を想像してみてください」と訴え、次のように続ける。「ヘブロンの人々は、想像する必要すらありません」

検問所は日に200人ほどのパレスチナ人が、回転式のドアをくぐって行き来している。周囲一帯でも最も危険な場所のひとつであり、過去には子供を含む多くの市民が命を落としている。この現場にさらなる恐怖を与えるのか、と動画は疑問を提起している。

こちらも現在は試験導入の段階であり、実弾でなくゴム弾が装填されている。しかしユーラシアン・タイムズは、「だが西岸地区とイスラエルにおいて、ゴム弾によって永続的な怪我を負った人々の例はいくつか出ている。なかには目を失った人々もいる」と述べ、実弾でないからといって安全であることを意味するものではないと警告している。

人命をむしろ救うことがあるとの説明だが……

スマート・シューター社は米ディフェンス・ニュースに対し、既存の銃器やドローンに取り付けるモジュール式として利用可能であり、90~95%の命中率を誇ると説明している。取り付けや取り外しは5分ほどで完了し、機敏に利用できるという。

戦場では先手を打って敵に射撃を命中させやすいことから、自らの生存率を向上する結果も期待できるとの触れ込みだ。

効果を強調するスマート・シューター社だが、疑念の声も上がっている。ユーラシアン・タイムズによると、パレスチナ人人権活動家であるイッサ・アムロ氏はハアレツ紙に対し、AI銃の誤作動が深刻な被害を招きかねないと指摘している。配備先は多くの市民が暮らす場所となっており、故障の際には多くの犠牲者を生みかねない。

アムロ氏は「私たちパレスチナ人は、イスラエルのハイテク軍事産業の実験台となってきました。産業は何が起ころうと責任を負わないのです」と述べ、人命軽視への不満を吐露した。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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