【南場】「だって、絶対起業したいって人はいつか辞めるでしょう。良いタイミングで出てもらって成功したら、戦略的提携も考えられるし。とにかく中に閉じ込めるんじゃなくて開放するのが大事で、後押ししたりいろんなサポートをする中で強いつながりができる。

DeNAがたったひとつの星でいるより、外の星とつながって星座になったほうが世の中に提供できることが大きいよねっていう考えです。それでも離職率はIT業界の平均より低いし、出戻り率も高まっているんですよ。

とにかくずっとコミュニティーでつながっていて、出たり入ったりすればいいっていう考え方ですね。あと、就職しないで世界一周していましたとか、キャリアにブランクがある寄り道経験者も大歓迎ですし。で、そういう人たちもメインストリームに乗れますよってメッセージを出していくことも大事です」

【原田】「魅力的な取り組みがあるからこそ関係性が続いていくわけですね」

【南場】「そう。あとは創業当時からやっていることなんだけど、大黒柱を抜いちゃうんですよね、その組織から。大黒柱が決まってきちゃうっていうのは、すごくもったいない。配置転換ないと次の人が活躍できないから」

【入山】「抜いたらまた次の大黒柱が出てくるっていうのは面白いですね」

外に出ていかない大企業人材

【入山】「でもこれ、DeNAだから良くて、大企業はやらないほうが良いと思うんですよね。会社っていろんな仕組みがかみ合っているから全体がうまく回っているわけで、つまみ食いしてやってもうまくいかない。そもそも『外に出てくれても構わない』って言われても、そんな人はほとんどいないのが実情」

撮影=福島直樹

【南場】「うちは将来起業したいとかっていう人はターゲットだし、大学生のときに起業したチームごと採用したりとか、起業家精神を重視しています」

【入山】「だから、そもそも採用の入り口が違うわけなんですよね。既存の大企業だと、いい大学出てちゃんと勉強ができる人を採ってるわけなので、無理なんですよ。だからローンディールのやっている大企業からベンチャーへのレンタル移籍は、“そうじゃない人”に火をつけていることになるので苦労も大きいんじゃないかな」

【原田】「これまで起業というとハードルが高くて超えられなかった人たちが、別の選択肢を用意することで外に出られるようになるということにも意味があると思うんですよね」

【南場】「いったん辞めて行けばいいのにって思うんだけど(笑)。でもDeNAでも、出向先で経営に触れたことでかなり育って、戻って大活躍した後に起業した例もあるので、そういうやり方でも成長はしますよね」

【原田】「レンタル移籍でいうと期間が決まっていて、背中を押されて出てくるわけなので、残してきた仲間や上司がいる状態で、なんとかしなければっていう計り知れないプレッシャーも大きいと思います」

【南場】「そうやって、人材が輝けるようなステージをまずは企業が用意しないといけないし、それが社外にあるなら行っておいでよって送り出す。優秀な人材を惹きつけるためには当然必要なことですよね」