才能を持った人たちが夢中になれていない
【原田】「南場さんとは経団連のスタートアップエコシステム委員会でご一緒させていただきましたが、やはりその中でも人材の流動性を高める必要性はかなり議論されました」
【南場】「とはいえ、私は絶対に流動性が必要だとは思わなくて、いま目の前のことに夢中になってる人はそれをとことん極めたらいいと思っているんです。でも、やりたいことが見つからないとか夢中になってることがないっていう人は外を見たらいい。
会社の中で探してみるのもいいけれど、異動って簡単ではないので、それが聞き入れられなかったら諦めないで、外に出て行って夢中になれることはないかなって探したらいいんじゃないかな。
才能を持った人たちが夢中になれていないってすごく残念。日本ってエンゲージメントが世界の中で最も低い、つまり仕事に夢中になってないんですよ。
やっぱりそこが生産性が低い一つの大きな要因だと思うんですよね。夢中って幸せじゃないですか。やみくもに動けって言うつもりないんだけど、夢中じゃない人こそ夢中な場所を見つけたほうがいいって思います」
【入山】「外にもしかしたら夢中になれるものとか、素晴らしい機会とかあるかもしれないけど、結局出ない限り知らないままなんですよね。レンタル移籍とかで、ベンチャーに行ってすごい何か夢中になっている人たちに出会って、みたいなところから火がついていくといいのかもしれないですね」
【南場】「それ以外にも、手を挙げて『自分はこういうことやりたいんです』って言う人に、なるべくやってもらう機会をつくるとか。自分のWILLを発表した人が報われるんだっていう前例を作ることも大事かもしれない」
【入山】「ただ、元々大企業の人はWILLがない人が多い。日本の教育がそうなっているんですね。自分たちの頃は将来の夢って小学校しか書いた記憶がなくて。中高になるといきなり偏差値になって、よくわかんないけどとりあえず偏差値の高いところに行くのが偉いと。そういう時代だったんでWILLを考えてないんですよね。
それに、自分にどういう可能性があって、何ができるのかもわからない。転職サイトに登録すれば一発で市場価値がわかるんですが、大企業の人は知らないんですよね。
自分は、何ができて何をやっていきたいかが明確になれば、この企業にいたほうがいいのか、外に行ったほうが能力発揮できるのかわかるのに。自分の価値を知ると、次に移りやすいっていうのもある」
【南場】「その組織でしか通用できない人材にどんどんなっていっちゃうパターンってありますよね。それが日本の終身雇用の最大の課題」
【原田】「大企業の整った環境によって、最初の数年ぐらいはある程度までレベルが上がるという利点はあるような気がするんですよね。それが成長カーブがなだらかになってしまうことで、そのような課題を生むんじゃないかって。だからこそ、越境が新しい成長の機会となれば良いなと」