節税、食料自給率向上…減反廃止はいいことだらけ

減反を廃止して米価を下げれば、貧しい人のための物価対策になるし、財政的にも3500億円の減反補助金を廃止できる。

米価が下がって困る主業農家への補塡ほてん(直接支払い)は1500億円くらいで済む。サラリーマン収入に依存している兼業農家には、所得補償となる直接支払いは不要である。小麦価格据え置きには財政負担が必要だが、この政策は財政負担を軽減する。

さらに減反廃止は、食料自給率の改善にもつながる。

2000年から20年以上も食料自給率を45%に引き上げる目標を掲げているにもかかわらず、2000年の40%から逆に減り続け、2021年の食料自給率は38%である。ところが、1960年の食料自給率79%も、今の38%も、その過半は米である。つまり、食料自給率の低下は、米の生産が減少してきたことが原因なのである。

最も効果的な食糧安全保障政策は、減反廃止による米の増産とこれによる輸出である。平時には米を輸出し、危機時には輸出に回していた米を食べるのである。

日本政府は、財政負担を行って米や輸入麦などの備蓄を行っている。しかし、輸出は財政負担の要らない無償の備蓄の役割を果たす。輸出とは国内の消費以上に生産することなので、食料自給率は向上する。

現在の水田面積全てにカリフォルニア米程度の単収の米を生産すれば、1700万トンの生産は難しくはない。国内生産が1700万トンで、国内消費分700万トン、輸出1000万トンとする。米の自給率は243%となる。

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現在、食料自給率のうち米は20%、残りが18%であるので、米の作付け拡大で他作物が減少する分を3%とすると、この場合の食料自給率は64%(20%×243%+18%-3%)となり、目標としてきた45%を大きく超える。

なぜ、減反は廃止されないのか

米価維持のための減反政策には、隠れた目的がある。

通常、銀行は他の業務の兼業を認められていない。この中で、JA農協は金融事業を兼業できる日本で唯一の法人である。

高米価で米に兼業農家等が多く滞留して、これらの農家の兼業・年金収入や農地転用益がJAバンクへ預金された。JAバンクは預金総額100兆円を超える日本トップクラスのメガバンクとなり、その全国団体である農林中金はこれをウォールストリートで運用して巨額の利益を得た。この利益を背景に、JA農協は葬祭事業等にも進出し、地域で独占的に活動している。高米価はJA農協の発展の基礎となった。

政治はどうか?

与野党とも選挙を考えると敵は作れない。特に、小選挙区や参議院の一人区では、少数でも組織化された票が、どちらの候補者に行くかどうかで当落は決まる。JA農協のような既得権者が組織する固定票は無視できない。こうして自民党から共産党まで全党が減反維持に染まる。

貧しい消費者のことや食料自給率向上を真剣に考えている政党などない。減反・高米価政策が消費者家計を圧迫し食料自給率を下げてきたことなど、彼らにはどうでもよいことなのだ。