食料品の値上がりには、どんな対策が有効なのか。キャノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「政府は物価対策の目玉として、輸入麦の政府売渡価格を据え置いた。だがこれは、税金で海外生産者を支援するようなもの。それよりも主食である米の減反政策を廃止し、米価を下げるべきだ」という――。
土鍋で炊き上げたごはん
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日本人がアメリカの小麦農家に補助金を出すのと同じ

輸入麦の売買は、民間ではなく政府が行っている。政府は、物価対策として、これまでの価格決定のルールからすれば本来20%上がるはずの輸入小麦の政府売渡価格を据え置いた。このために必要な財政負担は、半年で350億円と言われている。

消費者は、パンやスパゲッティの値段が上がらなくて喜ぶかもしれない。

しかし、輸入麦を生産しているのは、アメリカ、カナダ、オーストラリアである。彼らからすれば、日本政府は日本の納税者の金で、自分たちが輸出する小麦の需要量が減少しないようにしてくれている。つまり、日本はアメリカ等の生産者に補助金を出しているも同然なのだ。

小麦価格が上昇して、パンなどの値段が上ると、国民は飢えて死ぬのだろうか? パンがなくても日本には米がある。所得の低い人は、自宅でご飯を炊くとか、おにぎりやごはん付きの定食を食べれば、食料品の価格上昇をしのぐことができる。

不当な扱いを受ける国産米

パンの価格が上がれば代替品である米の消費は増加する。これは、国内の米生産者にとってもよいはずだ。しかも、小麦と違って、米はグルテンフリーである。

しかし、農林水産省が行ってきたのは、その逆である。