小麦の消費量が増加

食料自給率が低下した大きな原因は、国産の米の価格を大幅に引き上げてその消費を減少させ、輸入麦の価格を長期間据え置いてその消費を増加させたことだ。

1960年ごろは米の消費量は小麦の3倍以上もあったのに、今では両者の消費量はほぼ同じ程度になってしまった。大・はだか麦を入れると、米麦の消費量は逆転した。日本人の主食は米ではなく輸入麦となったのかもしれない。

国産の米をイジメて外国産の麦を優遇したのだ。

今では500万トンの米を減産して800万トンの麦を輸入している。小麦価格の据え置きは食料自給率向上に反する。食料自給率向上のためには、もっと小麦価格を上げなければならない。

小麦を使ったパン、パスタやコーンフレークなどの穀物食品
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減反を廃止して米価を下げれば、国内の米を助けるばかりでなく、貧しい消費者も助けることになる。食料分野では、減反廃止に勝る物価対策はない。それなのに、政府(農林水産省)・JA農協は、減反政策を強化してさらに米生産を減少させ、米価を上げようとしている。小麦よりも基礎的な食料だと思われる主食の米について、物価対策とは逆のことを行っているのだ。

主食の米価格を上げるのは逆進的

農家の所得を保証するのは価格だけではない。

アメリカもEUも、価格は市場に任せ、財政からの直接支払いによって、農家所得を確保している。日本でも、小麦、牛乳や牛肉などについても、同様な政策がとられ、農業保護によって消費が減らないような対策が講じられてきた。わが国では、米だけに高価格支持が残っている。

直接支払いの方が価格支持より優れた政策であることは、世界中の経済学者のコンセンサスである。

しかも、医療のように、本来財政負担が行われれば、国民は安く財やサービスの提供を受けられるはずなのに、減反は補助金(納税者負担)を出して米価を上げる(消費者負担増加)という異常な政策である。

国民は納税者として消費者として二重の負担をしている。主食の米の価格を上げることは、消費税以上に逆進的だ。「経世済民」とは対極にある減反は、経済学的には最悪の政策である。