「誰よりも優秀な使いっぱしりになる」
また、僕は多くの現場で最年少だったため「コーヒー買ってこい」とお使いを言い渡されることが多かったのですが、ほかの若手がいやいや歩いて買いに行くところを「はい!」とよろこんで走っていきました。すると「あいつに頼むと戻りも早いし、態度が気持ちいい」と評価されるようになり、また、たくさんの現場に声をかけられたわけです。
学歴がないことにコンプレックスを抱えていた僕は、認めてほしい、必要とされたいという気持ちや「これからの人生、どうやって生きていけばいいんだろう」という漠然とした不安を抱えていました。
だからこそ、「誰よりも優秀な使いっぱしりになる」と決めたのです。今は何者でもない自分だけれど、使いっぱしりの世界だったら──つまり何かを頼まれて、その仕事のために誰よりも手足を動かすことで、期待以上のアウトプットを出せる仕事なら──もしかしたら一番になれるかもしれないぞと考えて。
今もそのスタンスは変わっていません。ありがたいことにこれまでたくさんの企業と仕事をしてきましたが、当時と変わらず、「使いっぱしりとしてお役に立とう」という気持ちです。最近では「取締役」といった立派な肩書きがつくこともありますが、正直、それ自体にあまり価値を感じていません。
あくまで自分は使いっぱしりなんだ、えらくもなんともないんだ、お仕事をいただいているんだという意識がずっとあります。
どんどん仕事がつながっていく働き方
僕は、何かのプロだと自称しているわけではありませんし、ある仕事が飛び抜けて得意というわけでもありません。
でも、使いっぱしりとしては割と優秀なんじゃないか、と自負しています。ですからどんな仕事でも、「どうぞ松浦弥太郎を使ってやってください」というふうに考えています。
そしてお願いされたことや頼まれたこと、期待されたことには120パーセントでお返ししようと決めているのです。それでよろこんでいただけたらとてもしあわせです。工事現場をきれいにしていたときのように。
仕事とは、だれかのお役に立つこと。困っている人を助けること。そう心がけてきたからこそ、どんどん仕事がつながっていったのです(ですから、お金のために働いてるようなニュアンスの「稼ぐ」は嫌いな言葉のひとつです)。
まずは、目の前の人の期待を、いい方向に裏切ってみてください。驚かせてみる。よろこばせてみる。
すべての仕事は、そこから始まるのです。