共通の売り物は高品質であること

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事業活動のガバナンスの2つの型

何よりも重要な条件として挙げられるのは、これらの産業が地域社会に深く組み込まれていたことにあるのではないかと私は思っている。これらの産業における龍野製品は高品質であるということを共通の売り物にしてきた。この高品質を維持するうえで地域社会の役割は大きい。高品質は地域社会のガバナンスによって支えられてきたと見ることができる。製品の品質は製造工程での仕事の確かさによって支えられている。

地域の産業は、直接の事業者だけでなく、地域の住民にとっても、重要な意味を持っている。働き場所として、あるいはサービス製品の購入者として、貴重な存在であるからだ。地域社会は地域産業の重要なステークホルダーである。このような地域社会は、産地の諸事業所が適切に経営され、適切な仕事をしているかどうかを継続的に近くから監視している。

このように、地域によって緊密なガバナンスが行われている産業は土着産業と呼べるのではないかと私は考えている。オープンな社会で投資家と司法システムによってガバナンスが行われている公開企業とは対照的なガバナンスの方法だ。司法システムでは、事業所の内部にまで立ち入ったガバナンスは難しい。それに対して、地域のガバナンスでは、産業の仕事の仕方まできめ細かく監視することができる。龍野の場合、地域によるガバナンスが製品の品質と最も目に見える形で結びついているのは、そうめんである。揖保の糸は地域ブランドで、製品は近隣の農家の副業として製造されている。