夫婦はビジネスのベストパートナー
地域の疲弊が叫ばれて久しい。農山村の過疎化、中心部での商店の消滅。表面的には坂を転がり落ちるように滅びていくだけに見えるかもしれない。だが、決してそうではない。その中で、わが国の地域の経済を支え続ける家族の力というものがある。
夫婦・家族が一緒に働く姿は、日本の町の商店でよく見られる。いわゆる「家族従業型商店」である。お父さんは商品を仕入れにいき、また商店街組合の寄り合いに出ていく。お母さんは、店全般を仕切り、お客さんを接客する。商店街や小売市場の圧倒的多数の商店はそのやり方で商売を続けてきた。わが国で、「従業員なし」あるいは「従業員1人か2人」という零細商店が、世界に類例がないほどに数多く生き残ってきた力の源はここ、つまり家族ないし夫婦の力にあった。夫婦はまさにビジネスのベストパートナーなのである。
その力を、うまくビジネスの力に変えたのは、セブン-イレブンを筆頭とする日本のコンビニ・チェーンである。世界に向けて「多頻度小ロット高精度」のシステム力を誇っているが、その一方で、「夫婦で店を経営する」という日本の家族というアナログの力を基礎に置いて成長してきたというのは興味深いことである。
家族従業型商店では、多くの場合、お店の収入と家計との区別がない。店も収入も財産も、すべて家族のもの、というのがその基本精神。それとは対照的なのが、アメリカの夫婦関係。そこでは、結婚したときから離婚のことを考えて、家産を分与可能な形でもっておくと言われる(たとえば、冷蔵庫や洗濯機を2つ保有する)。夫婦の考え方も、洋の東西で違えば違うものだ。
日本流の考え方に似た姿は、中国や韓国や台湾など東アジア地域一般で見ることができる。当地を訪れた方も多いと思うが、わが国以上に小商人が活躍する。たとえば、ソウルの東大門や南大門の賑やかな繁華街を訪ねると、そこには小商店やそれらが集まった市場が群をなしている。通りにはみ出して営業する小商店で、日本以上に活気溢れるものとなっている。