「自分の居場所」ではなく「みんなの居場所」を意識すべき

「親のした通り」「言われた通り」に育った子は、気分しだいで突然行動がルーズになる傾向があるようです。

たとえば、男の子、女の子に関係なく、授業の最中に緊張感が抜け、いきなり足をイスの上に乗せるなんて子もいます。友だちに対して、言葉が一方通行になることもあります。決めつけ言葉になったり、相手に押しつけるような態度になったりすることも。かと思うと、がんばりがきかず、それまでやっていたワークを突然やめてしまい、さっと家に帰ってしまうこともあります。見かねた親御さんや先生から叱られても、行動はなかなか変えられないものです。

こういう子は、うまくコミュニケーションがとれず、残念ながら周囲から「愛されない子」になってしまっています。自分の立場、つまり「自分の居場所」に安住してしまい、そこから出てこようとしないので、大きく成長することもなく、たいていは勉強の成績も落ちていきます。成績が落ちれば人から抜かれ、抜かれると今度はまわりを攻撃し始めます。するとますます周囲から敬遠され、孤立していきます。悪循環になってしまうんですね。

いくら話しじょうずでも、相手の気持ちがわからない「一方的な話し方」では、「いいコミュニケーション」とは言えません。

須合啓『自分で考えて動ける子の育て方 「早くして!」「勉強しなさい!」「片づけなさい!」はもう言わない』(明日香出版社)

キーになるのは「相手の気持ち」、そして「相手のおかれた状況(居場所)」に配慮したコミュニケーションがとれるかどうかです。「思いやりにもとづくコミュニケーション」が大事なのです。そもそもコミュニケーションとは、単なる情報のやり取りではありません。情報のやり取りが行われる「みんなの居場所」そのものをつくる活動でもあります。

一方的な押しつけによるコミュニケーションは、「自分の居場所」にもとづく会話で、「みんなの居場所」を育むことはできません。でも社会に出てからのコミュニケーションは、それでは成立しません。だからこそ私たちおとなは、「子どもの気持ち」や「子どものおかれた状況(居場所)」に配慮したコミュニケーションをとるように、日ごろから意識していく必要があるのです。

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