「大量の本をいかに速く読むか」という速読術がもてはやされていますが、私は眉唾だと思っています。速読力より大切なのは、正確に本を読む能力です。難しい本を、1ページにいくら時間をかけてもいいから、とにかく一言一句が頭に入るまで読み解くことができるか。「わからないのは書き手が悪い」ではなく「自分の頭が悪い」と思って読むことです。そういう経験を積むと、頭脳というエンジンの排気量が増し、物事を精緻に考えられるようになります。

そうやって、論理的思考力を高めることができれば、いろいろな場面で自分の論理の至らなさを痛感することになるので、物事を落とし込んで考える癖がつく。つまり、より具体的に、数字を使って物事が考えられるようになるのです。そう、論理的思考力と具体化力、そして数値化力は同じものなのです。

付け加えておけば、気配りができないKYの人間は論理的思考力が弱い場合が多い。気配りというのも、その場の状況が細かいレベルまで論理的にわかっているからできることなので、論理的思考力のある人は、その場の気配りを臨機応変に働かせることができます。他の仕事も同じで、電話一本掛けるのだって、レポート一本書くのだって、それこそ徹底してできるはずです。周囲にとっては頼りになり、一緒に仕事をしていて気持ちのよい人であるのは間違いありません。

数値化力はプライベートの場面でも威力を発揮します。「家族生活の幸せ度」を数値化するとしたら、「経済的安定」と「家族同士の仲のよさ」という2つの指標で考えるべきでしょう。

前者に関してはお金が物をいいます。今年中に預金残高をいくらに増やす、新しい家を買うための頭金を貯める、といった手が考えられるから数値化は簡単ですが、家族同士の仲のよさを維持・向上させるための施策も数値化できないことではありません。現に私がそうで、毎週日曜日の夜、家族4人で外食することを毎月の目標にしています。妻を食事作りから解放するという意味もありますが、基本は4人で美味しいものを食べて、1週間の出来事を肴に、あれこれおしゃべりすること。家の近くにある、リーズナブルなフレンチレストランによく行きます。おかげで、うちの家族の幸せ度はかなり高いのではないか、と思っています。