「ため息をつくと幸せが逃げる」はウソ

先述したように、多くの現代人はしっかりと息を吐けていません。そのせいで常に身体が緊張した状態に陥っており、自ら上半身を凝り固まらせているのです。

緊張した後やがっかりしたとき、疲れ切ったときなど、思わず「ふぅ~」「はぁ~」とため息をついてしまうものですが、あれには肺に溜まった空気を出し切ることによって身体をリラックスさせる効果があるのです。

「ため息をつくと幸せが逃げていく」などという人もいますが、ため息をつかなかったら心身共に窮屈になってしまいます。

そこで私は皆さんに、肋骨に手を置いて深いため息をつくことを推奨しているのですが、「深くため息をつくと気持ちが楽になるし、背中や肩の凝りも軽くなる」といった感想をもらいます。

ふとしたときに深いため息をつくようにすれば、張り詰めた状態から解放されて心身のデトックスをすることになりますので、ぜひ習慣にして頂きたいと思います。

いつのまにか質の悪い呼吸をしている

肩を持ち上げて息を吸う浅い呼吸をしている人は、胸郭の前面(みぞおちのあたり)がパカッと開いて鳩胸になっています。このように、肋骨の下端がめくれ上がり、肋骨弓の角度が90度以上になっている状態を「リブフレア=rib flare」と呼びます。

肩を持ち上げる努力性の呼吸が定着してリブフレアを起こすと、横隔膜が強制的に伸ばされた状態になります。この状態では、横隔膜が呼吸筋としての役割を果たすことができなくなり、換気量が大幅に減少します。それを補うために、呼吸の補助筋である頚肩部の筋肉を使って息を吸うようになり、効率の悪い代償性の呼吸パターンが定着してしまうのです。

頚肩部の筋肉を酷使して息を吸うようになると、慢性的な首・肩の凝りや腰痛を招くだけでなく、不安症、パニック障害などを起こしやすくなります。

ところが大変多くの人がこのリブフレアを起こしていて、質の悪い呼吸パターンのまま何十年と暮らしているのです。