必要なのは極力コストを抑えること
NISAの使い方は、長期の資金運用にある。例えば、一般NISAであれば国内外の株式、国内外の上場投信(ETF)、国内外の不動産投資信託(REIT)などから資金運用の対象を選択する。海外の個別株や株式ETFを選択することによって、より高い成長が期待できる企業や国に投資することも可能だ。
つみたてNISAの選択肢は一般NISAよりも絞られている。対象商品は、インデックス投信、インデックスを上回る利得確保を目指してプロ(ファンドマネージャー)が運用する投資信託などだ。なお、インデックスとは、市場全体の値動き、価格の水準、リスクなどをはかる“モノサシ”をいう。日本株の代表的インデックスにTOPIXがある。
重要なことは、将来の展開は不確実であることだ。株が下がると思って売った結果、株価が上昇した。それがリスク(予想と異なる結果)だ。その上、プロのファンドマネージャーに運用を委託すると、あがりそうな銘柄を調査するためにコストがかかる。常にプロがインデックスよりも高い利得を生み出すとも限らない。
以上をまとめると、NISAを使う際、可能な限りコストを抑えることを心掛けるとよい。個別の株を買う場合は、相場が大きく下落したところで買うようにする。また、投資信託の購入を検討する場合はより低いコストで運用が行われている商品を選ぶのが良いだろう。
なぜ日本は投資する人が増えないのか
このようにNISAは、一定金額内で税金を負担せず、自分に合ったスタイルで長期の資金を運用するための重要な手段だ。ただ、NISA口座普及ペースは期待されたほど伸びていないように見える。2022年3月時点で、NISA(一般、つみたて)の口座数は1699万3887口座だ(出所は金融庁)。一方、2016年の日本証券業協会の報告によると、英国では成人人口の約半数が“個人貯蓄口座(Individual Savings Account、ISA)”を保有していた。
大きいのは、制度の分かりづらさと、時限措置であることだろう。2022年6月に日本証券業協会と日本取引所グループが公表した「2021年度国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査報告書」(以下、報告書)から読み取れる。
まず、制度の分かりづらさについて、回答者数1万人のうちNISAの名前も制度も知っているとの回答は35.4%、名前は知っているが制度内容はよく分からないとの回答が52.4%、名前を聞いたことがないとの回答が12.2%だった。NISA制度を認知している人(87.8%)のうち口座(一般とつみたて)を持つ人は34.0%にとどまっている。