「恋愛したくない人口」そのものは以前から変わらない

「恋愛を希望しない」割合で見ると、確かに2010年から随分と増えているように見えますが、では、コーホート別にその推移を絶対人口で見るとどうなるでしょう。それぞれの年齢別の割合に対して、国勢調査の未婚人口を掛け合わせて算出しました(2021年の割合は便宜上2020年の国勢調査の未婚人口と掛け合わせています)。

これによれば、現30~34歳世代も現40~44歳世代も、20代後半から30代前半にかけての「恋愛したくない人口」はほぼ同一です。つまり、割合が増えているように見えるのは、母数としての未婚人口が婚姻によって減っているからであり、20代後半時点で「恋愛したくない」未婚男女はそのまま30代前半以降も継続しているだけに過ぎません。つまり、「恋愛したくない人口」そのものは別に増えていないわけです。

それよりも「恋愛したいが恋人もいない」層に目を向けるべき

また、20代前半から20代後半にかけて「恋愛したくない人口」が減っているのは、この期間に急に恋愛意欲が湧き出たというより、能動的な恋愛意識はないものの、相手からのアプローチや自然な2人の人間関係の中で、恋愛または結婚へと進んだ未婚者がいるのでしょう。

「恋愛や結婚するつもりがなかったけど縁があったので結婚した」というのは、それはそれでよろしいのではないかと思います。しかし、30~34歳未婚男女で合計117万人が「恋愛したくない」と思っているのなら、それもそれで尊重すべきでしょう。もう年齢的に子どもでもないのですから。

それとも、若者の草食化と言いたい人たちは「恋愛したくない」若者を少子化解決のために無理やり恋愛や結婚をさせたいのでしょうか。まるで戦前の「産めよ、殖やせよ」の結婚報国思想のようです。それよりも、そもそも「恋愛はしたいけど付き合っている相手もいない」という残り中間層の4割の方に目を向けたほうが婚姻増の視点からは建設的です。