施設で亡くなると救急搬送になってしまう
ただ、自宅での最期をまっとうしようとすれば在宅支援医療と家族の理解が必要になるから、亡くなる時のことも事前に打ち合わせをして、どんなふうに“人生を卒業したいか”日頃から意思をしっかりと伝え合うことは大切だ。
日本法医学会の理事長で福岡大学法医学教室の久保教授は、「かかりつけ医と救急隊員、搬送先病院の連携を強化すれば、異状死は少し減らせるかもしれない」とし、以下の2点を今後の制度づくりとして提案する。
①自宅へ駆けつけた救急隊も、死亡の場合は警察に通報するのではなく、まず「かかりつけ医」に通報する。
②搬送先の病院も、死因がわからないからとすぐに警察に連絡をするのではなく、「かかりつけ医」に連絡をとる。
では、これで万全かというとそうでもない。ショートステイやデイサービスの施設で家族が異変を起こした場合は救急搬送され、異状死扱いになってしまう。ミドリさんの母親も私の母の場合も、たまたまショートステイ先の施設で異変が起きてしまった。
「医療法人運営の施設なら大丈夫」は間違い
「施設内での看取りは増えていますが、ショートステイの施設で急変が起きた場合は119番を呼ぶしかない。異状死扱いは免れません」
こう話すのは千葉県柏市の「手賀の杜クリニック」院長で、千葉県医師会警察関係医療担当理事を務める志賀元医師である。
同じ敷地やすぐ近くにある医療法人が運営しているような介護施設なら、医療法人との連携をセールスポイントにしているので、入所者が急変しても病院の医師が駆けつけると思いがちだが、当直医以外の人員を確保していない限りそれは望めない。
「だから我々のような開業医が嘱託医として入ったほうが、施設内の診取りは成立しやすいのです」(志賀元医師)
医師の配置の問題だけではない、施設の入所者に急変が起きればそれがほんとうに避けられなかった事故だったのか、管理などに手抜かりがなかったのか警察が捜査することになるため、警察への届け出をしなくてはならない。