その場で現金払いを迫られる遺族の戸惑い

葬儀社にしてみれば、立て替えた自分たちに文句を言われ、迷惑至極と言いたげだ。それにしても嘱託医や葬儀社は、通夜や葬儀のことで頭がいっぱいの取り込み中に現金払いで請求される遺族の気持ちを考えたことがあるのだろうか?

棺に収まって帰宅したばかりの家族を前にして現金を請求されるのは心が折れる。後日に銀行振り込みなどで支払えるようにいくつかの選択肢を用意してくれればよいのに。もし、検案を担当した医師から「ご愁傷様でした」のひとことでも添えて、葬儀後に請求書が送られてきたなら遺族の感情はそうとう違うのに。

写真=iStock.com/LSOphoto
※写真はイメージです

異状死扱いになった家族が検視や検案を経て自宅に戻るまでのプロセスや、私たちがしなければならないこと、そして払わなければならない費用について、あまりに情報が少なすぎる。そんなわからないことだらけの中で、葬儀社が立て替えておいたからと検案料の請求書を差し出すのである。言われたとおりに払わざるを得ないではないか。

「納得がいかない」遺族はほかにも…

葬儀社の担当者は、「次の約束があるので」と半分腰を浮かせた。そこで請求書の内訳に前夜の遺体保管料が入っていないことを指摘すると、あっさりと「あ、保管料はけっこうです。サービスさせていただきます」と言って立ち去った。

母親が施設で異状死したことを話してくれたミドリさんは、私と同じ神奈川県でも川崎市在住。参考までに彼女が支払った費用も以下に記しておく。

病院へは、文書料(検案書代)4400円、自費処置料として4万6200円。おそらくこの金額に救急救命のための診察処置料と検案料が含まれているのだと思う。

「火葬の予約がすぐに取れなくて、川崎市から東京都府中市の火葬場まで運ぶために、二日間、葬儀社に遺体を保管してもらいました」

そのための寝台車車両代が第一日目として車庫→病院→安置所の搬送で2万6400円、翌日の分が車庫→安置所→火葬場の搬送で1万9800円。病院への支払いと合わせて9万6800円だった。予想外の出費には今もって納得がいかないとミドリさんも話した。