神奈川県というだけでこんなにお金がかかるとは

東京都を管轄する警視庁をはじめ各県警の多くは、遺体を搬送する専用車を用意しているし、遺体の保管と検案を警察署内で済ませる方式をとっている。ところが神奈川県警は、民間の葬儀社に搬送も保管も委託しているため、遺族が費用を負担することになる(と、後から知った)。

もう一枚の領収書は葬儀社が立て替えたもので、嘱託医による検案料が4万5000円かかったことがわかった。このほか、救急搬送された病院に支払った当日の処置料を含めると15万円を超えた。神奈川県で異状死扱いになるとこんなにお金がかかるとはまったく知らなかった。かなりの出費を覚悟しておく必要があるのに、県民にはこうした情報がほとんど広まっていない。どこへ問い合わせをしてよいかも知らされていない。

どの地域でも同じだとは思うが、葬儀社の費用は実走代(註・搬送時の距離を計算)と人件費と高速代や備品代などの合計だ。それらは各社から見積もりを取って見比べれば相場もだいたい見当がつく。ただ、一般的にいうと警察が紹介する葬儀社は、今時のコンパクトな葬儀を売りにする会社よりは割高な傾向がある。

検案の代金だけは実施施設が同じであれば変わりようがなく、遺族が負担することになる。だから、搬送代金や人件費がリーズナブルな葬儀社を選ぶしか、節約の方法はない。

なぜ検案料を葬儀社が立て替えているのか…

初めて目にした死体検案料の領収書は、値段は印字されていたが、但し書きの欄に母の名が手書きで書き込まれ、受領印と検案をした施設の住所や院長名がスタンプされていた。4万5000円という金額が税込みかどうかさえもわからない。この検案料が高いのか安いのか、常識的な値段なのかも見当がつかない。しばらく無言で領収書を眺めている私を前に、葬儀社のスタッフは私の質問を見透かすかのように、先回りして釈明した。

「私どもは、嘱託医の先生から請求されたお値段をご遺族様に代わってお支払いし、それをご請求させていただいているだけですから、個々のお値段についてはわかりかねます」

遺体の保管と検案をする施設への搬送を担当した彼らは、迅速に仕事をしてくれたし、感謝もしている。でも、なぜ葬儀社が検案料を立て替えることになっているのか?

──皆さんは、おかしいと思ったことはないの?

葬儀社の営業担当は聞こえないふりをしている。面倒な質問に答えるつもりはさらさらなさそうだ。それでも再度尋ねた。

──我が家は検案料が無料だった東京から引っ越して来ましたでしょ。だから、なぜこんなにも違うのかとフシギなんですよ。これって横浜では平均的なお値段なんですか?

「そうだと思いますけれど、これ以上は……なぜこんなに料金がかかるんだとお叱りを受けることもありますが、私どもは立て替えた検案料の領収書をご遺族に渡すだけですから、お答えのしようがないのです。東京都が無料ですからよけいに不審がられますけれど、検案料に関しては警察に聞いてくださいと言うしかありません」