プレパの実態はフランス国内でもあまり知られていない
「受験準備級」という名前から、プレパについて、日本の大学受験予備校や学習塾のようなものをイメージされる方が多いかもしれないが、それは違う。プレパには一部私立校もあるが、公立校がほとんどで、公立校の場合はフランスの他の教育機関と同様に授業料はかからない。また、国の管轄にあり、学習指導要領などが定められた上で教育が行われている。プレパの教員になるのも難関であり、能力が高い選ばれた教員たちが未来のエリートたちの教育に当たっている。
実は、プレパはフランス国内ですら、あまり知られておらず、特に地方の市町村出身者には、その存在も実態もよく知られていない。なぜなら、プレパはある程度の規模の都市にある名門リセに附設されていることがほとんどだからである。そしてバカロレア取得者の1割程度しかプレパには進学しないため、プレパを経験した人が少ないからである。
「モグラ」と呼ばれるプレパの学生たち
ではプレパの実態とはどのようなものなのか。うわさレベルで、「プレパは怖い」「プレパにいくとあまりのキツさに精神を病む」というようなものがあり、そのせいか、筆者が行ってきたグランゼコール卒業生たちへのインタビュー調査では「プレパに行く覚悟が持てなかった」「プレパに行くのが怖かった」「プレパはきついからやめておいたらと(周囲の人に)言われた」という話がよく聞かれた。
また、プレパの学生は目指す名門グランゼコールに向けて、学内の競争に晒されながら、太陽を見ることもないくらい、朝から晩まで勉強漬けの生活を送るため、「モグラ」と呼ばれてしまうほどである。
実際、筆者の調査の中でプレパの思い出を語ってもらうと、ポジティブな思い出を語る人と、ネガティブな思い出を語る人と半々である。ポジティブな思い出を語る人は、勉強が楽しくて仕方ないというタイプであり、良い教師や同級生に恵まれて切磋琢磨しながら一緒に勉強を頑張れたという理由が大きいようである。
ネガティブな思い出を語る人は、とにかく競争が辛かった、勉強のスピードが早すぎてついていくのが大変だった、というのがその理由だったようだ。いずれにしても、プレパではかなりの勉強量をこなす必要があることには違いない。また、私立には全寮制のプレパもあり、昼休みなどでも部屋に戻ってすぐに勉強できるというメリットを語った卒業生もいた。