朝から晩まで、そして週末まで勉強する生活

プレパでは本当に朝から晩まで、そして週末も勉強という生活を送ることになる。土曜日も朝から模擬試験を受けたり、放課後にはグランゼコールの2次試験で課される口頭試問対策のために「コル」と呼ばれる少人数制の試験対策の訓練を受けたりする。これは毎日のようにほとんどの科目で行う訓練である。筆者があるプレパでコルの見学をした時には、20時過ぎまでこの訓練が行われていた。

山﨑晶子『現代フランスのエリート形成 言語資本と階層移動』(青弓社)
山﨑晶子『現代フランスのエリート形成 言語資本と階層移動』(青弓社)

そしてこうした競争に常に晒されている中で、プレパ1年目から2年目に上がれずに大学への編入を促される学生もいる。つまり、もうあなたにはグランゼコールは無理ですというプレパ教員からの宣告のようなものである。

また理系のプレパでは2年目のクラスがレベル別になっており、エトワール(星)が専攻名につくクラスに行けるか行けないかによって、その後進めるグランゼコールのレベルが変わってしまうこともある。例えば数学・物理専攻エトワールというクラスに入れると、理系最高峰グランゼコールの1つであるエコール・ポリテクニックへの合格にグッと近づくが、星がつかないクラスに入ると、授業の進度がゆっくりとなり、それ以下の難易度のグランゼコールにしか行けないというように学生たちは導かれてしまう。

こうしてグランゼコールを目指す学生たちは、まずプレパに入って競争、競争で勉強ずくめの生活になり、そこで学習指導要領に沿って各々の志望グランゼコールに向けたさまざまな訓練を受けて力をつけていき、目指すグランゼコールが課す試験問題へ挑んでいくことになる。冒頭で挙げたのはその試験問題の1例である。

赤い本を持った学生
写真=iStock.com/Bulat Silvia
※写真はイメージです

1年限りの留年は認められているが…

プレパで十分な試験対策を行い、苛烈な競争に心も折れずに努力し続けられれば、一見手ごわく見えるグランゼコールの入学試験問題に対峙たいじしても恐れることはない。

日本の大学受験生のように、何かをひたすら暗記して勉強し、その知識を試験で問われるのではなく、試験問題で何が問われているかを正しく理解した上で、自分がこれまでに身につけた知識・教養を使用しながら求められた形式に基づいて適切に答案にアウトプットしながら論じているか否かというのが合否の鍵となる。そのための訓練を行う場がプレパなのである。

そしてプレパのなかでも、一部の難関グランゼコールへの進学実績が高いプレパで上位の成績をおさめていない限り、グランゼコール入試の突破は難しい。そのため、1年まではプレパにおける留年が認められており、目指すグランゼコール合格を目指すことが可能になっている。

しかし、それは1年限りであり、そこで入試に失敗したらやはりグランゼコールへの道はほぼ閉ざされたこととなる。つまり、日本の大学受験のように2浪、3浪と何年かけてでも志望校へ、ということは不可能なのである。